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ensemble「お嬢様はご機嫌ナナメ」 感想…とツッコミ+α

2013年07月20日 21:57

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オジョナナこと、ensemble第6作「お嬢様はご機嫌ナナメ」の感想を書き連ねたい。
経済部分については体験版以降の内容でも大変言いたいことが多いという残念な結果になってしまったので、
無粋とは思いつつも何がまずくて何を感じたか、体験版と同じように触れることにしました。

ライターの推奨攻略順として、名波→花が挙げられているが
私的な推奨攻略順は
透香→音羽→詩綾→花→名波
だったりします。

(以下、ネタバレを含みます)
■絵
細い線で描かれるタッチと淡い色彩が見事に調和しており、非常に柔らかみの感じる絵柄に仕上がっています。

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CGでは人物の周囲に浮かぶオーブ光点が幻想的な美しさを引き出している。

枚数はSDを除いて84枚とそれほど多くはないものの、アングルも多様で、崩れが少ない。
ただ、淡い色彩を全体に渡って統一しているせいか、画面の多くを暗色が占める…夜の月明りに照らしだされているCGでは肌色が若干紫よりになっており、色合いに多少の違和感も感じました。

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立ち絵はやっぱり小さい気がする。
乙キャンの時から進化していない点なので、次回作以降はワイド画面全体を用いて、フォントサイズを大きめになると良いか
もしれません。


■音楽
違和感なし。
耳に残る曲は「後悔の淵で」でしょうか。切ないシーンで使われることが多かった。

ちなみに体験版では無かったOPをようやく聞くことが出来ましたが、聞き始めはおもわず
理多が歌っているのかと。


■声
非常に高く評価しています。

まず、名波(CV:桐谷華)の無気力系演技が新鮮かつフリーダムです。素晴らしい。
声質はささやくような感じで澤田なつっぽい。更には暁の護衛終末論の楓っぽい。(まうまうとか言って物食べてるシーンで暗喩かと思った私である)
桐谷さんの演技の幅と、挑戦心が聞いて取れます。
名波が天才設定であるところから、これは饒舌になるシーンがあるかもと思っていましたが、結局最後まで無気力系を貫き通しました。
しかし、一部豹変する箇所もあって、

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七波「萌っえ萌っえビーム♪」
お前誰やアアアアアアアアアアアアアアア

また、詩綾さんの声も素晴らしい。奏雨さん(*´Д`)ハァハァ
今まで巡り合う機会がなかったのですが、今後は注目させていただきます。

星崎イリア(2012年コンビクションリスト・バイ)は元気系と今回も相性抜群です。
つたなさを感じる発音が大変良い。もっと色々な作品に出ていただきたいです。
透夏は珍しく大人っぽいみや美さんの声が堪能でき、音羽は前半りんごっぽくないなぁと思ったら後半はりんごそのものだったという。
絶叫シーンばかり記憶に残る詩音は、萌花ちょこの無駄遣いだろう、ほんとに…。

んーーそれにしてもこの配役、WillPlusですね。

みるや一色ヒカル等、メインヒロイン以外でも鉄板が起用されているなど、結構豪華です。


■システム
体験版通り、システム周りについてはシェーダーを用いた解像度の拡大やボイスの途中再生等、業界平均以上の印象。
ただし、演出は最低限といった印象ですね。
基幹システムが同じと思われるPULLTOPと比べると演出に随分と差があるように感じてしまうのは、やはり人手の問題なのでしょうか。アイドルグループの歌い出しで立ち絵がプルプル震えだした辺りで、頑張りを感じつつもワロタ

前述した通り、立ち絵と共に、メッセージウインドウ(テキスト領域)が4:3領域までしかなく、フォントサイズもかなり小さいです。ここは次回作以降の改善を期待したい。

なお本作はプロテクト有りです。WillPlusは2013年からプロテクト、StarForce5.7を採用しており、これがカーネルの奥深くにドライバがインストールされ、定期的なディスクチェックにより光学ドライブにも負担をかけるという厄介な仕様です。金曜夜には共に購入した友人が早速プロテクト誤爆に陥り、ブチ切れる惨状を目の当たりしました。


■エロ
詩綾さん最高や!他のヒロインなんていらんかったんや!

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一番良かったのは詩綾さんをベンチに押し倒したCGですね。
身体のラインを強調しつつ、正面からまっすぐにこちらを見つめてくる…良い構図です。

名波さんはえちぃシーンでも無気力系でしたが、まるで某日曜夕方の国民的アニメヒロインみたいな話し方でしたね。
1ヒロイン4シーン、CGは最低限といった印象でしょうか。


■シナリオ
本作は財閥に絡むいくつかのイベントを終えると、大きく2つのルートでシナリオが分岐、名波・花・詩綾の財閥ルートは体験版感想でも懸念した経済ネタが大々的に展開され、音羽・透香のアイドルルートは体験版では微塵もなかったアイドル養成サクセスストーリーが展開されます。

シナリオの二分といえば「遥かに仰ぎ、麗しの(2006年)」や「天使の羽を踏まないでっ(2011年)」でも見られたものですが、こういった奇をてらった派生は、多様性、ボリュームの観点からは悪くない試みだと感じます。反面、統一性が取れなくなったり、キャラクターの登場頻度等に大きな差が出たりする等のデメリットも出てしまった印象。

もう一つ、経済ネタ━━━━は本作が持つ他作品との差別化出来る特徴であり、メインヒロインの本家である七枷財閥を始めとして多数絡んでくるのですが、正直出来はかなり悪いです。
誤った知識を植えつけかねない内容も含まれ、誤った解釈や視野狭窄な論理が目立ち、かつその上でシナリオが展開されたため、最後までしっくりと来ないままででした。
根本的な問題は、
(企業間の問題を扱いながらも)個人投資家目線でしか描かれず、機関投資家の視点が全く無いこと、
そしてライターの金融知識が不足していたことに尽きると思っています。(細かな論点を避ける、条件を外部から与える等すればもっと巧く出来たはず)
その辺を感じ取れる人は雰囲気だけを感じ取って、深く考えないようにすることが楽しむ秘訣です。

ちなみに、体験版の感想で金額が少ないと触れていたら本当に大きい金額が出てきましたが今度はスケール感が付いていかなかったというジレンマ。
ルートごとに触れていきましょう。


→財閥ルート
前半は七枷財閥の粉飾騒動、後半は庶民となった名波との貧乏生活を描きつつ、鶴美と雪小路スノーロード銀行の経営権取得を巡って対立するお話。
詩綾は別次元として、残念だったのは過去に関わる名波、花ルートではその解明に大部分が割かれ、イチャラブと恋愛発展の描写が希薄だったことでしょう。萌えゲーとして大きなマイナスポイントだったと感じています。
ただ、全てのルートで「ロイヤルゴールデンローズ」で七波に紅茶を淹れるという元の夢が叶えるシーンが入っていて、こういった細かな配慮を作品全体に徹底できればよかったのではないかと。


 ・名波ルート
おそらく、本作のメインヒロインといえば名波が挙げられるのでしょう。口数が少ないながらも、最もカリスマ性に優れるキャラクターでした。
庶民生活にすら早々と慣れて、主人公を導く万能ぶりを見せつつも、さりげない嫉妬の描写などもあってなおヒロイン力高し。
一方、本ルート最大のポイントは元の成長にあるのではないかと感じました。
元が貧乏クラスに溶け込み、学園での経済戦争を経て自ら鶴美を許容する(花ルートのように妹の仲介を必要としなかった)展開は他のルートの元とは異なり、自律的な変化が伺えた。私的には、名波ルートこそ締めにふさわしい。

ojyonana018.jpg

難点を挙げれば、問題の解決策は大体が名波自身の発案によるものだったわけですが、最後の最後で初めから全て想定済だったと言われても、いまいち現実感が沸かなかったことですね。
そして経済部分のヤバさは個別ルートトップクラス。10億円足りないという鶴美さんの茶番ぶりを始め、一国を担う財閥の行方を学校行事で決めてしまうという急激なスケールの縮小は何とかならなかったものか。株式保有比率や経営権取得など、今まで散々現実的な用語を織り交ぜようとしながらも、この緩い帰結で一気にネタ作品に昇華。
この残念具合には銃撃戦の末、最後でなぜか銃を放り捨てナイフ戦になった映画「コマンドー」を思い出した。


 ・花ルート
絵の伏線や鶴美との確執を決着させた、大団円ルートでした。
花は最後に攻略したのですが、ここまで来ると大体話の大筋が掴めていて、それでいて予想を上回らずにあっさり感多々。特に、イチャラブ成分が少ないのが気になりました。
義兄妹の誤解が解けた後の進展が急ピッチ過ぎて
誤解が解ける→抱いて!くらいの体感。どんだけ発情してんの。いやかわいいから良いんですけど!

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鶴美との和解は妹、家族が間に立つという人間ドラマ的な形でしたが、私的には名波ルートのまとめ方の方が好みですね。
終始元気っ娘の星咲イリアさんが光ってます。フロイラインの台詞を何度も再生してしまった私でした。


 ・詩綾ルート
体験版とは評価を異次元にしたのが彼女。本作最大のダークホース。

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変態だーーーーーー!
この展開は想像できなかった…いや、あまりにナナメ上なルートに終始爆笑しっぱなしでした。
そう、まるで直前までプレイしていた一つ飛ばし恋愛が乗り移ったかのような。(ポジションを見てもお嬢様のライバル企業ご令嬢ということで見事な一つ飛ばし)
テキストに突然感嘆符が増え、主人公のツッコミと合わさってテンポも良く、あっという間のエンディングでした。

詩音が経営者としての萌芽等、コミカルなノリの中でシリアスも両立出来ており、バランスが良い。

ああ、詩綾ちゃんの頭を掴んで投げ飛ばしたい。
そしてハァハァさせたい(*´Д`)

詩綾の場合、強烈なダメさを抱えているからこそ、人間味が出ているヒロインなのです。
4月までのガンホー株のように私の詩綾に対する評価は天高く上っていったのでした。

そんなナナメ上を言った詩綾ルートですが…
あとちょっと感心したのはタイトル画面に戻ってロゴを見た時。

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ナナメってそういうことかーーーーーーー!
本ルート最大のオチでした。私はこういう方向性、大好きです。

なお財閥√で最初に攻略したのが彼女だったのですが、シュールストレミングも共通の範囲内に含まれていて噴出しました。


→アイドルルート
アイドルルートでは、元はマネージャーとなり、夢を支える側に。ここまで財閥側と方向が違えばこちらが保住担当ルートでしょうか。本ルートは夢や偶像(アイドル)という経済や合理性と対立する要素を軸にして、感情に訴えかける描写を多くしたことでシナリオそのものの出来がよくなっていたと思います。
経済はロジカル故に、その良し悪しを判断する上でロジカルさが判断基準の一つとなりましたが(だからこそ突っ込みどころが生まれた)、本ルートはシンプル故に、受け入れやすい。
ただ、財閥ルートとの乖離は激しく、隠した9億円はどこかへ消え失せ、名波もほとんど登場しなくなり、主人との絆はどうなったのかという形でオジョナナとしてのバランス感はあまり無かったような気がします。一方で、特訓などを通じて日常描写は多く盛り込まれ、個別ルートに突入した後のイチャラブもなかなかでした。


 ・音羽ルート
まずヒロインとしての音羽さんですが現実にいても相当ウザいレベルの自己中です。しかし、非凡な才能の裏にある努力と、彼女の言動は正論だったことで、そのウザさを持ってなお魅力あるヒロインに仕立て上げられていたと思います。
音羽は庶民であり、立ち位置は日常、平凡の象徴。まさしく「金がなくても幸せに生きることは可能」的な本作のテーマに一番近い存在だったのではないでしょうか。
彼女の登場するシーンで元は日常に回帰していく……ことが印象的でした。

音羽の原動力は夢であり、夢に向かってひたすらに走る彼女の姿は眩しく元気付けられるものがあり、
台詞にも芯があるので私は割りと好きです。

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>「なんの努力もなしじゃ、それは夢見てるだけ。ただの寝言といっしょじゃない」
>「夢がなきゃ、からっからに乾くようにできてんの」

しかし、こんな尖ったヒロインではありますが
告白直後から急に青葉りんごになりました。
声変わりすぎや。

お話はかなりのご都合主義で、分家の妨害も結局感情に訴えかけることで解決。
闇金業者もお手伝いしちゃう辺りが緩い世界観です。

もうちょいシビアなら「オマエの言いたいことはわかった。まぁ国内で活動させないけどな」で終了なのですが。
鶴美は立派なアイドルとなった二人を見て、自分の感情を殺し、元が自分の下を離れることを許した、と頑張って補完することにしたい。
地下アイドルという設定は結構新鮮だったと思うのですが、あまりシナリオには生きていなかったような……


 ・透夏ルート
体験版ではなりを潜めていたトニックシャンプーさんですが、体験版以降で大きく評価が上向いたヒロインだと思います。
女の子らしくなるためにアイドルを目指し、ホワイトボード上で確認する元との絆、すれ違う想い……
彼女こそ、本物の純情ピュア乙女でした。
夢を追っていく音羽の横で、自らの目標を見定めていく姿にも成長が感じられ、まとまりあるルートに仕上がっていたと思います。
そんな透夏の最大の良さは

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笑顔がすごくカワイイ。



■総評
70点
素点  +50点
 詩綾お嬢様分  +25点
 経済        - 5点
   ワロタ         +10点
   茶番すぎる     -15点

う、うーん。終わってみれば、普通の萌えゲーの域を出ないような……
経済部分も、「突っ込ませたい」という趣旨であればスパイス足りうるものですが、財閥の関係を含めて予想を上回らない・展開に無理がある等、拍子抜けする箇所が多いのと、かなり比率を割いてしまったのが問題だと思いました。
無気力系の名波や、個別ルートで覚醒する詩綾、妹メイドの花、とヒロインの持つ魅力はあれど、個別シナリオの多くが経済戦争や家族関係の解明に割かれ、萌えゲーに要求される日常やイチャラブといった要素がおろそかになってしまったように感じました。
その一方で、絵は素晴らしいし、ヒロインの色付けもしっかりとされている。

したがって本作は
・絵マジ最高。
・名波お嬢様(桐谷華の演技)が良い
・詩綾お嬢様オーバーウェイト
・Mで変態なヒロインに萌える
・花ちゃん(イリアさん)マジ天使

な方にはオススメしたいです。

私的には詩綾ルートみたいな軽くて楽しいのがもっとあれば良いと感じました。





余談:経済部分は案の定だった件について

体験版の記事で経済部分に対し懸念を述べたLumiLia。
本編ではその期待に応えた、凄まじい内容が待ち受けていたのであった……

※体験版部分の国債に関するツッコミについては体験版感想をご覧ください。


まずは体験版が終わってすぐにCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の記載が登場。
管理人の心境:あかんそうな単語キタ

株は知っていたがCDSは知らないという主人公。
シュウエイは証券会社から取引情報を入手。


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>七枷財閥のCDSはとてつもない安値で取引されている。保険料がもらえる可能性が、ほとんどゼロだからだ
死亡した人に払われるのは保険料ではなく、
保険金なのですが……

経済以前の話ェ……


>取引金額が億を超えてることからいっても、おそらく個人の仕業ではない。
一般的に、CDSは機関投資家が取引する商品で、
取引単位も億なのですが…


想定元本でなく、株式と同じように取引額ベースで書かれているのは不自然ですね。個別CDSは契約後一定おきにキャッシュフローが発生するのが通常で、売買時点での金銭取引の発生しているのは経過利息の支払いやアップフロント(前払い)を指すことになる認識。だが、企業が健全なら通常アップフロントは発生しない。


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>たがそのイカれた理念には、需要と共通が成り立つだろうことは容易に想像がついた。
……需要と供給?
誤字であることを祈ります。


>企業の発行する債券
ここは突っ込みでもないのですが、金融商品にデリバティブという誤った横文字等、さんざん専門ぽく使っているのに、ここで社債という単語が出てこないのがちぐはぐさを感じる点ですね。
全体的にいえることは意味なく具体的な数字や用語を出してくるので、一体なぜこの数字を出す必要があったのか?この用語がここで使われていれば、ここで同じ水準の単語が使われないのはなぜなのか?など色々思います。つまり包括的でない。
ex.10億円が4,5人の人生を左右する金額との記載
  →生涯賃金2~2.5億円、現実と遜色はないと認識。一方、家計資産も1,000兆円超と同水準だが、しかし銀行の国債保有高は約2倍であり、デフレ2%が続く世界でいったいどういう資産構造になっているのか思い浮かばない(よってロジカルさに欠ける印象を抱く)



続いてはデフレに関する記載についてです。

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>前年比━━プラス0.1%。
>だが実際には2%もデフレが進行してる。去年と今年では、2%も貨幣価値に差があるのだ。
>それが一体何を意味するのか?
>大雑把だが実質的な成長率は、2.1%以上あったことになる。

ならねぇよ。

まさかのマクロ経済の数式がミクロ経済に介入。なぜ経済成長率と企業利益成長率が同一視されているのか。
デフレは一国の現象であり、この通りだと、七枷財閥は海外で事業展開していないということになります。
鎖国してるのか。
しかも、デフレ状況下であれば国債の金利低下により、国債保有益も上がるため利益を押し上げても何らおかしくはない。
いくらなんでも短絡的過ぎる。

>昨日のこれに気付いたときは、頭がどうにかなりそうだった。
私の頭もどうにかなりそうですわ。

まだまだ続きます。だんだんヤバい雰囲気になってきます。


お次は財閥ルート第一部の根幹を担う七枷財閥粉飾騒動。
ここでは粉飾が発覚すると日本がヤバい!みたいな下りがありまして、これについて見てみましょう。

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流れとしては
七枷財閥の粉飾発覚→資産圧縮によりグループ会社保有の国債100兆円が市中に大量売却→国債暴落→日本ヤバい
…という展開で、もう少しわかりやすく補完しますと

七枷グループ企業が債務超過により破綻、その借入の大部分を賄っていた(※1)旧七枷銀行の融資(負債サイド)が焦げ付くことで、現東京セブンスター銀行に壊滅的な打撃が及ぶ…という経路なのですが、この段階で
国債保有額100兆円って七枷生命とセブンスター銀行の顧客預かり資産の裏付けがほとんどだろ、とか
七枷グループ企業の資金調達は七枷銀行から独立していると書いてあったから焦げ付かないんじゃないの?
という疑問が生じますが頑張ってスルーします。
銀行の破綻は、自己資本の毀損もしくは資金繰りが行き詰まるということなのですが、
「Too big Too fail」な東京セブンスター銀行の救済は、清算コストと救済コストを対比すれば政府の行動は自明で、どう考えても90年代の日本みたく公的資金が注入されるだろう
と思うわけでございます。実際には雪小路スノーロード銀行があって水面下で提携話が進んでいるわけですから、お上の指示で雪小路に吸収合併がなお現実的なシナリオです。
したがって100兆円の国債が売られて日本がヤバいという話は、現実感がないお話。
まぁここは国債投げ売ってでも名波を助けたいとする元の行動の美しさが現れたシーンではあるのですが。



さらに、財閥ルート二部の要とも言える外資ファンドによる雪小路スノーロード銀行の経営権乗っ取りに話を移しましょう。
この辺から色々現実との乖離が激しくなってきますが、要するに話はこうです。

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・株式10%超の株主は役員会の解散請求権を持つ
・解散請求権を行使されないため、スノーロード銀行は10%超の株主の指定する役員を1名受け入れるよう取り決め
・鶴美は外資ファンドから資金を集め、10%超の取得を目指すが、10億円足りない

そもそも解散請求できないと思うのですが…
雪小路財閥は解散を否決可能なのですが…
役員選任を否決可能なのですが…
監督官庁がブチ切れるのですが……


雪小路スノーロード銀行の株式時価総額は軽く7兆円を超えるらしいですが、MUFGグループでさえ時価10兆円くらいあるんだけど時価総額少なすぎない?と思った人、その感覚はきっと正しい。
買収防衛策はないんですか?と思った人、その感覚もまた正しい。

株式取得はなかなか面倒な制度が絡みまして、市場で買い付ければ5%ルールに則り届出をする必要もあり、銀行法でも総議決権5%以上の保有者は届出が必要、20%以上の保有比率、つまり経営に影響を及ぼすような場合は金融庁の認可が必要となります。実際の買収の場合は株式公開買い付けを行わなければなりません。

体験版感想の循環出資構造でも触れましたが、株式の保有比率によって株主には様々な権利が与えられます。
本作では株式の10%超を取得すると役員会の解散請求権が持てるらしいです。

役員会という点がさっぱりわかりませんが、現実で定められている10%超で請求可能な権利は会社の解散請求権です。
しかし、通常解散請求権は、やむを得ぬ事情、つまり企業の経営状況が一時期のシャープのような株主にとって損害が及ぶかもしれない、危機的状況において発動できる権利です。
さらに、これはあくまで解散の請求であって、その可否は決議により決められます。
(仮に承認無しでよければ10%の株式取得で企業の経営に破壊的な影響を与えられます。つまり、10%の循環出資構造ですでに七枷財閥がヤバい。

雪小路スノーロード銀行は雪小路財閥が経営権を握っているわけですから、請求があっても否決に至るだけで、役員会の解散は現実的ではなく、本請求権はほぼ意味の成さない権利となっています。
したがって、それを恐れて役員を受け入れようと規定するスノーロード銀行側の対応もおかしい。さらには役員の選任にも取締役会や株主総会での承認が必要で、ここにも雪小路の力が及ぶだろうというわけで、ましてや頭取の選任なんか出来るわけねぇだろと思う点で違和感バリバリなのでした。
そして、このような状況を頑張ってスルーした所で、さらに海外のファンド勢を巻き込んだ1兆円のディールで10億円が足りないと抜かす鶴美さんの存在や、さらに名波ルートでは最終的に財閥の行く末を一学園のイベントで決めようという無茶な帰結がさらに茶番を盛り上げたのでした。(友禅寺傘下企業からの貸付扱い、大胆なら七枷生命身売り、頭取就任後の協定などいくらでも調達できたのでは?)


……一旦、休憩しましょう。
財閥ルートは、ここまで挙げた経済要素の矛盾を全て下に敷いて成り立っています。
100兆円を、日本を守ったというドヤ顔のやり取りを見るたびに何とも言えない気持ちに駆られるのです。しかし、名波ルートにおいてこれらを吹き飛ばすようなネタが待ち受けていました。


最後のトドメは、名波ルートで展開された経済戦争(エコノミック・ウォー)です。
少なくとも私の知っている株取引などとは遠く離れたものと化していましたが、

ルールが与えられている以上、突っ込みどころはない

omoita.jpg
……と思っていたのか?

…本作最大のヤマです。


当初読み進めたとき、私の頭はどうしても理解を受け付けず、その理由をずっと考えていました。
分析を行いながら、その違和感を解きほぐしてみましょう。


ojyonana008.jpg

まず、この株価チャートはなんですかね。

・なぜにローソク足。(フェイズ制だから高値もクソもない)
・目盛の間隔が177TENでしかも500以上と未満で異なる。
・フェイズ数と合っていない


……正しい株価の推移はこうです。

ojyonanaewchart.jpg

……しかしこのトンデモチャートに反応してしまうようでは甘いです。
粗をわざと目立たせておいて、
本当の落とし穴を覆い隠すトラップです。


改めて経済戦争のルールを確認してみましょう。

・初期資金量は10,000TEN、20株。
・買いと売りの注文数を比較し、買いが多ければ株価は上昇、売りが多ければ株価は下落
・フェイズ制。ゲームは3ステージ、45×3の135フェイズで攻勢され、売り買いの判断を毎フェイズ決定。
・買いはそのフェイズの株価で可能だが、売りは次のフェイズの株価が適用される
・株の下落率は数式によって規定されているため、買いと売り注文量の差を算出可能

※ややこしい言い回しの本編から巧く捉えることが出来たでしょうか?私は苦労しました。
このような単純ルール…に見えますが、実はこれ、凄まじいルールです。

通常売買とは、ある物が同じ価格で、物が売った人から買った人に渡ります。このとき、全体のカネの量が変わることはありません。
しかしこのゲームでは、買いが売りより多くても、売買が成立します
例え売りたい人がゼロ人だったとしても、買いたい人がいれば、株がは買い手の手に渡り、株価が上昇する事態が発生します。売り買いがプレイヤー間で行われるわけでもないのです。

一体この株はどこから沸いてくるのでしょうか?このルールによってどういう事態が起こりうるのでしょうか。

結論から言うと、
この市場の通貨供給量は常に変動し、
皆が儲けようと買いに走れば、
通貨供給量が無限に増えていきます。
株価が際限なく上昇するのでハイパーインフレがおきます


シミュレーションしてみましょう。
プレイヤーは1人しかおらず、10株を購入後、売りを5株ずつ2回に分けて行い、2回目の売却時にまた10株買う…という行動を繰り返していきます。
株価はひとまず固定値として10株保有時=110円と5株保有時=103円と設定します。 

フェイズ保有金額保有株数保有株
時価
総資産買い
注文数
売り
注文数
株価
11,000 0 0 1,000 10 0 100
20 10 1,100 1,100 0 5 110
3515 5 515 1,030 10 5 103
435 10 1,100 1,135 0 5 110
5550 5 515 1,065 10 5 103
670 10 1,100 1,170 0 5 110
7585 5 515 1,100 10 5 103
8105 10 1,100 1,205 0 5 110
9620 5 515 1,135 11 5 103
1037 11 1,210 1,247 0 5 110
11552 6 618 1,170 10 5 103
1272 11 1,210 1,282 0 5 110
13587 6 618 1,205 10 5 103
14107 11 1,210 1,317 0 5 110
15622 6 618 1,240 11 5 103
1639 12 1,320 1,359 0 5 110
17554 7 721 1,275 10 5 103
1874 12 1,320 1,394 0 5 110
19589 7 721 1,310 10 0 103

総資産が増えていくことが確認できます。
この市場の問題は、買いと売りの値段が異なる、すなわち二重価格が存在することです。
5株売って10株買う取引を行うと、次のフェイズで株価が上昇し、さらにその値上がりした株価で売ることが出来るという、本来成立しない取引が成立します。
この結果、いつの間にか市場に存在する金の量が増えていきます。逆に皆が空売りをすれば、資金量は限りなく減少、株価もゴミクズ同然になります。

供給量を調節するよう株価を調整する対策は、買いが売りより多ければ株価が上がるという決定のルールに反する事態が起き、取引量から見た株価の算出も出来なくなります。

次に株価の決定について触れましょう。
株価は理論的に、株式を発行する企業価値が裏付けとなっており、それは将来の利益を織り込んだ理論価格で、その価格に基いた時価総額が存在します。経済戦争内では株式数が変動するので一株当たり理論株価は常に変動することを意味します…が、どうやら株価は需給のみで決定されるようです。この需給による株価決定にもおかしな点があることに気付きます。

価格決定メカニズムが1次的な直線の場合、10株を買って、5株ずつ2回売却した際の株価が100を上回っているかどうかで株価が無限に上昇するか、下落するかが決まります。もし、1次的な価格関数であれば、上記のように経済戦争内で、ハイパーインフレが確実に起きます。
この作品のルールのように900TENを上限に設定するためには、株価が上昇すればするほど株価が上がりにくくなる…同じ売買差での上昇率が曲線的に低下、最終的には極小になる必要があります(一定の買いに対し、凹関数を描く形となる)。ちなみに、作中に出てくる数字を用いた価格関数の導出はサンプル数が少なすぎるため、不可能です。
本来ならば、売買差は、全体の株数・資金量に左右され、さらにどれだけを占めるかのインパクトで決定されます。株価の変化から売買量の差を導き出す……しかし、全体の資金量がどう変動するかはわからない。
んーーーー、元は一体どうやって算出式を導き出したのでしょうか?


経済戦争の歪みは、
・売買における二重価格の存在
・不可解な株価決定メカニズム

の2点に存在すると考えられます。
そしてこの2点から言えること、それは
ルール段階でゲームが破綻している。

経済戦争のルールを踏まえると、本作で描かれる投資行動は合理的に見てもおかしい点があることに気付きます。
例えば第1ステージ21フェイズ目で、すまいるファンドは897円で一度に全株を売却しましたが、これでは急落後の株価が売却価格になってしまいます。(推定売却価格は550円、あまり価格を下げて計算すると損失になるのです……)
自らが最大の下落インパクトを伴って下落した価格で売る行為は阿呆の極みです。経済戦争における合理的に収益を上げる戦略は、「買い上げながら売る」ことです。つまり、800円台で価格が急落しない形で、毎フェイズ売却し、平均売却価格を吊り上げることが戦略となります。
基本的には、買うときは一度に安い価格で買い上げ、売却は高い価格で順次行うことが、経済戦争における正しい戦略です。
一方、第3ステージで名波が株価が高い内に空売りを細かに繰り返していた行為がありましたが、これは非常に有効であったといえるでしょう。ラストの全株買戻しも素晴らしいですね。

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空売りの描写にも、不可思議な点が見受けられます。
すまいるファンドは一度に保有株の売却と空売りを行っていますが、これは出来ないはず。株を借りるためには担保として資金を差し入れる必要があるので、全株を売却したフェイズでは借り入れる担保がなく、全株売り+全空売りのオペレーションには最低2フェイズかかることになります。

銀行の機能についても考えてみましょう。
経済戦争における銀行からの資金借入、株式借入は、「株価上昇圧力をもたらさずに株と資金を交換する」、市場外取引の機能を持つと考えればよいでしょう。
第2ステージで行った鶴美の株価吊り上げはシミュレーション上はなかなか面白く、ある程度合理的だったとすれば、鶴美の行為は
・銀行を破綻させるために配下の生徒を利用して株を調達する(本編の記述どおり)
・売り注文を合わせて出しつつも株価を上昇させる。資金量を増やしつつ、株価を吊り上げる。
・最後に売り抜ける前に、その直前で借入金を銀行に全て返済し、高くなった株を担保に、資金を借り入れる。
銀行からの株の借りパクのメリットは売り行為による株価下落を伴わず、現金化できる点にあり、破綻前提であればかなりスマートな行為と言えます。

第3ステージのすまいるファンド逆転の空売りについて。
すまいるファンドは第1ステージの段階で全資産を全て株式で保有しており、名波はすまいるファンドから株を借り、価格が高いうちに空売りを行い、最後で買い戻し株価を上昇させることですまいるファンドの保有株式時価総額を引上げ、かつ空売りからの利益を計上しました。
ここでは資産額で鶴美ファンドに勝つためには出来るだけ株価を高い状況でゲームを終える=最後に大量の株を買い戻す必要があり、そのために名波は出来るだけ多くの株を空売りする必要がありました。
すまいるファンドの出資者数600人を想定すると、第一部、及び二部終了次点でのすまいるファンド保有株数を試算すると約430,000株。終盤に鶴美が買いオペを行ったことで通貨供給量が減少したことを考えると、そのインパクトは池の中の鯨。
こんな株数を空売りする余地はあの市場にあったんでしょうか?

さらに言うと、価格変化アルゴリズムを推察できるのは鶴美ファンドも同じで、誰かが継続的に大規模な売りを出していれば、それは観察出来ておかしくはない。資金量が減少した市場の中で、大きなフローを生み出せる投資家は少なくとも大口プレイヤーの3者しかおらず、その株の供給源も想定がついたはず。であれば、鶴見ファンドは一定量の株を買い上げつつ、売却するトレードを行っていれば良かった。
なお、作中では株価が上昇した場合も株を返却すれば勝利出来た…との記載でしたが、私には理解不能でした。
仮に、名波の空売り後に株価が上昇すれば、名波はその売却した株数を買い戻すことは出来なくなり、資金量は不変です。

鶴美による資金の吸収は、実質的な金融引き締め、売りオペです。しかし、先ほど申したルール上の欠陥により、通貨供給量はどんどん変化していきますので意味を全く為さないことになります……。
経済戦争の市場は気まぐれな中央銀行が複数存在しているカオスな状況です。「株価に物価変動のシステムを組み込んだ」…というテキストも意味不明です。
将来的に為替が切り下がっていくと考え、現金が欲しい生徒は株を売却しTENに換え、TENを円に換えるという合理的行動により株安へ波及、通貨供給量の減少により流動性が低下し、一段と下落する…という流れをデフレと一括りにしたことでさらにわけが分からなくなってしまった気がする。

各ファンドの資金量も大きな謎ですね。
第1フェイズから1,000TENずつ買いを入れたすまいるファンド。第9フェイズまで同じペースで買い入れ(2,000買い入れたフェイズもあったが次に休止したことで平均購入額は1,000TEN)、9,000TENまで買い進めました。終始買いが優勢で、200TENから500TEN程度まで徐々に上昇したと考えると、その平均買入コストを間の350TENとおいて350×9,000=315万TEN。初期保有は一人10,000TENですから、すでに315人の資金が投入されていることになります。
途中の買い優勢の描写では「買いを上回っている」という描写もありましたが、10,000TENが50株の中で、売り買い注文は平気で数千の差がついていきます。しかも鶴美は1,000TENしか買いインパクトに貢献しておらず、銀行は手数料で儲ける方針なのでニュートラル、つまり外部勢力の買い(+銀行借り入れによるレバレッジ最大2倍)、かなりの資金量です。
株価が655円の段階で第三者勢力による差し引き10,000株以上の買いが入っています。さらに、資金量ですまいるファンドの2倍に迫ったという銀行、鶴美ファンドも含めますと、
この学園は一体何人の生徒が在籍しているんでしょうか?
もしかしなくても、某大図書館並…いやそれを超えます。

…このような感じで経済戦争は私の理解を遥かに超えたクソg戦いなのでした。

経済戦争の勝敗は、保有時価総額につながる最後の株価が圧倒的に重要です。
相手のポジションを予想しながら、ラストでどう売買をしてどの価格で取引を終えるか?が肝となります。互いの腹を探りながらゲームを進めていく、欲を言えばそういった緊張感が欲しかったですね。



━━以上のように、本作は経済面でもある意味大変面白い作品です。

経済ネタで勝負に挑んだその姿勢自体は評価したいし、ここまで??となったのも久々かもしれません。
昨今のエロゲはファンタジー要素を含む作品が大変多いですが、本作は直球要素を排した代わりに、
経済部分がファンタジー になってしまったようです。

萌えゲーとして絵の品質も高く、笑わせてくれるのでオススメできるゲームです。
是非、一度プレイしてみてはいかがでしょうか。


お読みいただきありがとうございました。


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