2013年07月27日 20:22
新年を迎え、1234567ヶ月が経った。我々の歩みとは関係なく、時間はあっという間に過ぎ去っていく。
長いはずだった夏もあっという間に過ぎ去り、秋が来て…2011年の事態が繰り返されてしまう。
ということで、一年も折り返した今、ここで2012年のエロゲーについて1作品ずつ振り返り、書き連ねたい。
長いはずだった夏もあっという間に過ぎ去り、秋が来て…2011年の事態が繰り返されてしまう。
ということで、一年も折り返した今、ここで2012年のエロゲーについて1作品ずつ振り返り、書き連ねたい。
まず1月にプレイした作品は「真剣で私に恋しなさい!S」、通称「まじ恋S」。

本作は近年では一番の豊作だった2009年を代表する一作のFDである。前作の無駄に燃える展開も踏襲されていた。ただ、まじ恋は私的にはプレイしている時は面白かったが、終わって間も無く内容を忘れた作品で、まじ恋Sプレイ時も本編の内容を思い出すのに苦労したのであった。
まじ恋の特徴はライタータカヒロ氏が描く日常のドタバタ系コメディに加え、登場人物の多さに見合った豪華な声優陣だ。
本作も多くの新キャラが登場し、名義は非公開ながら、多くの"どこかで聞いた声"を聞くことが出来た。ダメ絶対音感が試されるのだ。私はというと大友焔の声をキャッチした。後の小鳥居ボイスである。燕も聞きやすい声質で新鮮味があった。これも後のマジチャにつながる。
美琴の声をエロゲで聞いたのは東鳩2ぶりだが、正直エロシーンないとかなめてんの?あ?そして後々大図書館に先を越される残念ぶり。
13年以降ヒロイン毎に作品を出すという、分割商法ならぬルート商法に走るみなとそふとで、ここで打ち止めとなったのであった。
続いて、もう一つの1月物が「学☆王- THE ROYAL SEVEN STARS 」だ。元々何を思って本作に手を出したのか、覚えていない。
しかし、これは本当に、素晴らしい声ゲーだったのである。
シナリオはいつものランプで普通、むしろ読み飛ばして良いレベル。注目すべきは声である。小鳥居夕花(※中の人)処女作という点もさることながら、声に対する配慮が大変行き届いているのだ。
その陣営は、いつの間にかスマプリセンターになっていた澤田なつ(鉄板)、新人だけどどこかで聞いた小鳥居夕花、丸みのある声の割りに絶頂がやたらと上手い(私的印象)藤崎ウサ(当時、過小評価されていた印象)、裏では鉄板中の鉄板、演技の幅が広すぎるりっかりんこと北見六花(これも一つ飛ばし恋愛で飛び立った)、もはや神懸かっているとしか言いようの無い中の人ポートフォリオ。シーンの数も一人あたり7シーンと多いことに加え、ウサさんにこれだけ絶頂(絶叫)ボイスを叫ばせたのも素晴らしく、えちぃシーンでの
・主人公の呼び方があなたになる
・長い台詞やモノローグがない
……といったことが全ルートで徹底されるなど、スタッフが本当によくわかっている。
メインヒロインの名前は表のキャラクターと被せた確信犯…もとい故意犯。
もう一度言おう。
これは評価されていい。
LumiLiaは全力で賞賛を送りたい。この路線ならば、次回作も躊躇無く私は特攻するだろう。(→次回作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!→特攻しました)
強いて本作の不満点を述べれば、オート中のページ送りでオート解除となってしまう等のシステム的な部分だ。(これはマジチャで全て修正されておりもはや敵無し)
なお、FDの「 It's Heartful Days」はテコ入れとも言える出来で、ニーズを強く満たすものであった。
下落を続けていたランプオブシュガー株は一気に反転したのである。
次に、2月発売の「グリザイアの迷宮」。
実はプレイしたのは果実と共に年末年始。グリザイアシリーズは凄く大雑把に言ってしまえば、Routesから伝奇要素を差し引いて、重くしたような作品だ。主人公の通う学園にはトラウマを抱えた5人のヒロインしかおらず、学園物とは言えない事は確かで、箱庭モノに近い。
前半の糞長いギャグパートが終わり個別ルートに入ると、途端に重い展開が押し寄せてくる。軍や考案といった国家的な話も絡み、非日常を軸として、ウィットに富んだ会話を楽しめる。…が、全てを持っていったのは天才である姉の存在であった。全3部作の内の2部作目が本作で、各個別ルートのアフター、主人公の過去話に焦点が置かれている。この構成どこかで見たことがあると思ったらふむ、暁の護衛ですな。正直あまり書くことがないが私はマキナ推しだ(キリッ

3月は、ゆずソフトの新作「DRACU-RIOT!」のプレイに終始した。ゆずソフト前作「のーぶる☆わーくす」は私にとってこれまでよりも格段に面白く、萌えゲーメーカーだったゆずソフトが一皮向けたと、期待値も高かったのだ。


結論から言うと、そこそこ良い萌えゲーという評価に留まった。詳しくはレビューをご覧頂きたい。コスト削減が意識されつつも、毎年作品を生み出すゆずソフトの姿勢は賞賛すべきものだ。
ヒロイン一人一人の威力は高かったが、テンプレート化した日常シーンに感じる退屈さや、「退魔弾」という世界観崩壊の突っ込み設定の存在がネガティブで、純粋に学園物を追及し満足度の高かった「のーぶる☆わーくす」よりも評価は後退した作品となった。2012年で唯一レビュー記事を投稿した作品だが、今思い返すとその後同種類の萌えげーが微妙だったこともあって、「あれは悪くなかった」と、プレイ当時よりも評価を見直している。…といっても80点には届かないが。あと梓のキャラソンはfripsideにしか聞こえない。
4月には思わぬ名作との出会いがあった。2月に発売された「はつゆきさくら」だ。冬をテーマにした思いがけぬガチ作品で、音楽やシナリオに恵まれた良作であった。
タイトルの軽さに惑わされてはいけない。ヒロインはみな可愛くて和めるが、その結末は重く、残酷だ。最後まで扱いの酷かったシロクマ、個別に突入したと思ったら初めから全てが終わっていた綾、他にも頭を壁に殴打したくなるようなルートばかりだ。
酒浸りで今を忘れようと無為に日常を送る主人公の姿に、社会の歯車として暗い日々を送る自らを重ねる。幻想の世界にあり続けようとするゴーストもまた、二次元から逃れられない我々への強烈な当てつけに思える。
気付けば精神的にフルボッコにされていた。恐ろしい作品である。
登場するキャラクターは皆魅力に溢れ、男女とも楽しめるだろう。全てを諦めると言いながらも、希望を捨て切れず他人に縋ってしまう主人公の行動には、一人では生きれないという人間の本質が描かれている。
各ルートの構成も上手く、一人でもヒロインを攻略した後は、「ああこの作品はハッピーエンドに至るわけではないようだ」と、覚悟と緊張感を持ってプレイを進めることになる。
音楽も本作を彩る非常に美しい要素の一つだ。水月サウンドらしい音の軽やかさと切なく心に響くメロディが調和し、作品の世界観を一つ上の次元へ昇華させていた。I've sound最古のアルバム「verge」に収録されたがBGMで使われているという試みも面白い。
声もまた面白い要素が存在している。作品中多く登場するモブキャラボイスは、全て立ち絵のあるキャラクターの声優によって賄われており、故に一人の声優の様々な演技を楽しむことが出来るのだ。
キャラ萌えにも隙はない。メインヒロインはぴゃーぴゃー言ってて始めはうざいが、だんだん可愛くなってくる。車の人恐るべしである。
ちなみに私はこの作品で、サクヤ(非攻略キャラ)の声が素晴らしいなと、星咲イリアを耳に留めた。
OP「Hesitation Snow」はfripside2期の中で最高の良曲だと思っている。全てが終わり、KOTOKOによって唄われるED曲「Presto」もまた名曲である。
全員に受け入れられるかどうかはわからないが、全ての要素において高い次元で調和できている良作である。初雪から桜まで、卒業おめでとう。
「屋上の百合霊さん」は百合をテーマにした異色作だ。ライアーソフトはいつもエッジに富んだ作品をぶれずに出してくる。

今まで管理人は百合に対し敬遠していたところがあったが、「百合とはこんなに優しい世界だったのか!」と考えを改めさせられた。女性同士という関係に対し、あるカップルは葛藤を伴いながら、あるカップルは力強く肯定し……様々な恋愛模様が丁寧に描かれている。主従関係の中で女性同士としての恋愛を描いたつり乙ほど微細ではないものの表現がストレートで、より自然な恋愛であった。
少女漫画のようなデザインで、繰り広げられたシナリオもまた少女漫画であった。初心なヒロイン同士のやり取りに、和まざるにはいられないのである。新しい境地で見つけた、新たな心地よい世界。そんな実りある作品であった。ちなみにエロは絶望的だ。
「乙女が紡ぐ恋のキャンバス」は雰囲気が良く、さらにFDも同年発売と超速リリースながら、双方プレイした作品だ。
ensambleは作品が出るごとに安定的に面白さが増しており、ブランド買いのメーカーである。
女装ゲーの良さは「俺TUEE成分が発揮しやすい」こと、そして「男性の優位性が女性のみの空間で生かされる」点にあると思う。
また、女装ゲーを好む人も2つに別れていると思っていて、一つは女の子に変装する中性的な主人公に萌える人、もう一方は女装設定に付随する俺TUEEE要素を目当てにする人である。LumiLiaは残念ながら(?)後者目当てが主だが、emsenbleの女装ゲーは、双方の点において質が向上しており評価に値する。
過去作と比べ、本作の主人公の優位性は単純な身体的能力差ではなく、芸術の才能を主人公に備えさせた点にあり、その上でアートを軸とした世界観を作り上げることで、各シナリオで起伏が生まれたことが秀逸だった。各ヒロインのルートで異なった視点から芸術を取り巻く世界観を生かせたことで作品に魅力が生まれた。芸術という広がりに果てのない世界を軸に、白黒であった主人公の心が様々に彩られていく━━その綺麗な展開からは、ensembleというメーカーに確変めいたものを感じさせた。ただ、極めて残念なのは、幸ルートを除いてシナリオの構成が甘すぎることだった。明らかにライターが異なることがわかってしまうレベルで、ヒロインがアホの子になったり展開が滅茶苦茶なルート(FDで消えたあのキャラである)もあって勿体無い作品にもなってしまった。
主人公の声は桐谷華、これが男の娘としては踏まないの鈴田美代子ボイス以来の役にはまっていた声だった。脳が蕩けた。
5月にプレイした「この大空に、翼を広げて」は、夏にふさわしき良作だった。
これほど青春した作品を見たのは久しぶりだ。
我々がプレイするほとんどのエロゲ作品は、非日常的要素が絡んでいる。それは我々が暗に非日常を求めている一方で、制作側では日常要素だけでは話を発展させにくいということの証左なのだと思う。
しかし、ころげてにファンタジー要素は一切入らない。それでいて、面白いのだ。
人が目標を見つけ、何か一つの物に向かって力を合わせて突き進む、美しい世界観だ。人は単体では空を見上げることしか出来ないが、グライダーを用いれば空を飛ぶことが出来る。無限に開かれた未来への期待と不安感は空に投影され、果てしなき未知へのワクワク感が、作品を明るい方向性に導いている。本作に終わりはない。
その一方で、余りに綺麗過ぎる登場人物、世界観そのものに非日常感が垣間見えた気がしなくもなかった。
グライダーが離陸し、滑空する描写は見事だ。
大空を駆け抜ける爽快感が、テキストと共にスリル溢れる描写で伝わってくる。

背景は緻密に描かれ、品質が非常に高い。モーニンググローリーを始めとした自然の美しさが細かに描かれている。
皆でグライダーを作成して、空を飛ぶ。その過程にこれほどの実在感を感じさせられたのは、テキスト、ビジュアル、演出が一体となって空間を創り出すことに成功していたからだろう。
一方突っ込みどころは、またもマルチライターである。水準の高さを保持した小鳥、天音は紺乃アスタ氏が担当。夏の雨メインを務めた気鋭のライターだ。
怪我で自転車に乗ることを諦めた主人公がヒロインを取り戻すため、トラウマを乗り越え自転車で全力疾走する小鳥ルート、そのの一方で姉妹ルートでゴクゴクと尿を飲み干す主人公に、私はかにしのをプレイした時と同様の感触を覚えた。あげはルートも、恋愛への発展過程が明らかに異質で、いきなり情事を始める主人公らにお前らは猿かと突っ込まざるを得なかった。
ボーカル曲はOP曲とテーマ曲のみだが、歌詞やリズム感が独特で、かつムービーとの相性が素晴らしい。双方とも名曲で、今も度々聞いている曲である。(冬のWinter Bells、夏のPrecious WingとPULLTOPの生み出す季節感ある楽曲は恐ろしさすら感じる)
はつゆきさくらを経て、星咲イリアを本作で堪能でき、俺ガッツポーズ。以降、星咲ボイス=小鳥で固定されたけどな!
平均回帰はあらゆるものでみられるように、はつゆきさくら、乙キャン、百合霊さん、ころげてと奇跡的な良作ラッシュに恵まれた後、一旦の谷が来たのであった。
6月末に登場したのは「fortissimo EXS//Akkord:nächsten Phase」。fortissimoは初作から未完成のまま世に出され、その後怒りの日の如くシナリオが追加され、新タイトルで再販されるという酷いシリーズだ。

本作は3作目にあたり、信者にはお気の毒というほかないが、LumiLiaが本作を購入したのはなんでもない、今まで一般ゲーだったシリーズが18禁化されたためだ。
サーカス作品におけるゲームの位置付けは私的には「最終試験くじら」で全て終わっている。それ以降のサーカスの功績……は、立花あやを始めとした、サーカス独自とも言える中の人の輩出にあると考えている。
サーカス作品の声優━━最近は表から引っ張ってくることが多いが━━は、それなりに上手い。本作では、新鳴はるかがいたのが大きかった。
話は戻るが、シナリオはひたすら戦闘力がインフレする中二バトル物。ひたすら読みにくい漢字やカタカナを多用し、テキストの質が書きたい内容に追いついていないことが気になったが、それ以上にまずいのは、
シナリオにまでブシロードが介入していたことだろう。

色々と察して欲しい。
その他、文字フォントが読みにくい、一部エフェクトのカットが出来ない、しかも動作が糞遅い、とシステム面でもストレスを感じる仕様で、声以外では糞評価を下さざるをえない。
「中の人などいない! トーキョー・ヒーロー・プロジェクト」、輝かしい過去の栄光を胸に抱き、もはや惰性で特攻しているのがALcotだ。

作品名を聞いてとりあえず確認せざるを得ない中の人であったが、あんずみつ、車の人、桐谷華とお、おう……近年ベテランになった裏表バッチコイのキャスト陣である。というか姉妹ブランドで同時期発売の作品と同じキャストで「収録を1回で済ませたかったのでは」省エネ疑惑がかけられることとなった。るい様可愛すぎてヤバい。
勢いとパロディでひたすら走り続けるALcotは三角関係のドロドロ恋愛劇という昔の路線と決別している。
でもノリは面白い。その裏で、一抹の哀愁を感じるLumiLiaであった。

「Rewrite Harvest festa!」は一般ゲーではあるが取り上げておきたい。率直に言えば、
私が見たかった篝ちゃんはこんなのではなかった。
全体的に短く、尻切れ感もあって、未完成である。
朱音ルートもほぼやり直しであり、これやる意味なかったのでは。私はあの終わった世界の果てで、二人がどう生きていくかが見たかったと言うのに。
Rewriteで繰り広げられた世界をリセットにしてしまう、この行為は星の記憶を否定しているのではないか?
それでも一般ゲーという枠内でルチアルートで擬似セックル描写に挑戦した竜騎士07氏には敬意を表したい。
「終わる世界とバースデイ」。レコンキスタのライター、であれば…と、ご無沙汰コットン作品に至った。
各ルートでは様々な怪奇現象が起こり、やがて世界に潜む大きな謎が設定が隠されている。割と使い古された展開でありながら、エロゲで見たのは初めてだと思うし、ラストの締めは大変良くまとまっている。片岡ともが担当したという織姫のみ別次元でもはや真ヒロインである。余韻もある良作だ。あと、良いみるゲー。
OPはデンカレだったことに珍しさを感じた。
「World end economica 1&2」。全3部作のうちの第2作目が夏コミにて発売された。本作は同人ゲーであり、エロゲでもないが、LumiLiaの興味を強く引いたのだ。
ライターは支倉凍砂氏、作品ジャンルはインベストメント・パンク・ノベル…と、金融色の強い作品になっており、作中では株式市場でのトレードを始めとして、「投資銀行」「クオンツ」「金融工学」といった単語が登場し、架空の事業会社から現実に存在するファンドまで登場する。しかしこれらはあくまでスパイスであって、本筋はヒューマン・ドラマだ。
月面都市というSF設定と、その時代に合わせて組み込まれた市場の概念が巧く融合されている。市場の細かな描写と、それに含まれる抽象性が見事に書き分けられ、しかとした取材に基づいて書かれていることが伺えた。市場とは、未知ではあるが、それが目の前にあるかどうかわからない、そしてその距離も測ることが出来ない。それはある種アウタースペースのようなものだ。だからこそ、この組み合わせは面白いのだ。
何が人の価値を決めるのか。カネか、正義なのか、信仰心なのか。主観的な価値と客観的な価値はどこで差が生まれるのか。
第一部で描かれた慢心と絶望の後、第二部で描かれた不条理。動的で不条理、弱肉強食の現実を見せつけながら、それでも誇り高き意志が存在する。残る1作をLumiLiaは楽しみにしている。背景の綺麗さと、BGMの良さも素晴らしい。
「魔法使いの夜」。本作も一般ゲー。型月が送り出した最新作だ。
Fateの時からそうであったが、SEと演出の一体感は凄まじく、戦闘描写の格好良さ、そして没入感は頭ひとつ抜けている。魔法に対する思想、設定は確固として根付いており、魔法物を書かせるなら奈須きのこはひとつの答えであろう。短いながらも、文庫を読むような感覚で楽しめた。
塗りがよくなったせいだろう、CGの品質も格段に上がっていた。ボイスはなし、ビジュアルノベルというジャンルを極めたような作品だと思った。あと、エロゲではない点は☓。
「波間の国のファウスト」。ヒロインがバイアウトファンドのマネージャー、1国二制度の舞台とシンガポールと中国の深センを混ぜたような特区の存在。エロゲには珍しい経済を軸に据えた作品で、怖いもの見たさで突撃した。

実質実効為替レートは上昇基調、前年比11.2%、前年比8.9%(6月)、0.7pt減(国家統計局)
で、中国の鉱工業生産の原指数って公表されてないよね。
結論から言えば、少し私の予想とは違っていた。経済面については序盤はハゲタカを意識したような文脈もあったが、作品全体としては専門用語も多用され、ウォールストリート的なウィットに富んだ会話や駆け引きが展開されていく。残念だったのは、ブラックスワンや市場の動き自体は伝わったが、人々の動きは、経済物としてはリアリティも足りなかった点だろうか。学院資産運用部も目的が不明確で、やはり金融の情報をまとめ切れていない印象を受けた。もう少し多くの立場の投資家目線が欲しかった。人権問題、原発問題、金融危機、色々と詰め込みすぎて最終的にそれぞれのテーマが薄くなってしまったと思う。
海外のファンドで多くの実績を積み上げ、帰国した主人公……大風呂敷を広げ、どんなに規模の大きい展開が始まるかと思いきや、ヒロインの大判焼き屋経営の建て直しに励んでいるという矮小さに泣いた。問題の突破法はやたら細かいに、パニックに陥った市場をT-bondスプレッドのチャート上の値動きのみで表現していたのはやや残念。しかも解説一切なしで素人置いてけぼりの状況だ。
素人は置いてきぼりなんじゃ…と思いつつなぜトレジャリースプレッドなのか…と思うのであった。
金融を軸に入れるなら、その良さは生かして欲しかった。要するに私は求めるものを間違えたのだ。面白さや濃さではワールドエンドエコノミカ、精液で学ぶ韓国経済が面白い。
キャラデザは塗りが原画の良さを殺してしまったようにも思える。BGMの大雑把っぽさなど、総括すると、5年前にタイムスリップした気になった。ただメーカー的にもライター的にもこれからだと思う。進歩を期待したい。
「イモウトノカタチ」は2012年で最も糞ゲーといえる地雷作品であった。
それに実妹と背徳にひたすら突っ走るというユーザーの求めていたものを全く満たしていなかったことに加え、シナリオは未完成で、主人公がキチガイ過ぎることが大問題であった。ライターは常識を身に付けるべき。
cuffs系列は声に力が入っており、豪華だ。ピンクは棒声が癖になる卯衣。ミータはまたもあんずさん、幼馴染は未来日記でヤンデレしていた人だ。だがエロは薄い。プレイする価値無し。(いや、ほんとつり乙があって良かった)
強いて言えば、1年経った今でも、糞ゲーの筆頭格として挙げられること、「フフリ」と呟けば腹パンの合図。

この立ち絵を見ているとやる夫が思い浮かぶのは私だけでしょうか?

まゆきは天使。
「いろとりどりのヒカリ」は昨年取り上げた作品いろとりどりのセカイFD。
真紅との甘々いちゃいちゃな日々が目的だった本作だが、とてもFDとは思えない程、ボリュームがあり、本編クラスの重い作品であった。
コントラストの強い色彩、重厚感ある音楽はそのままで、テキストもますます詩的であった。本シリーズを私が気に入っているのは論理的でいて、抽象的なところだ。
白い羽根や最果ての図書館、多くのいろとりどりの世界。現実で形として表す事の出来ない概念が、いろセカの中では実態を伴う。形を変えて別のものを比喩するのは、ジブリ的だと思う。
言葉は世界とするくらいだ、テキストも強いのだ。
「Re:birth colony -Lost azurite - 」。

世界観ゲー兼、声ゲー。小鳥居出演作2作目ですよ!
キャラデザはアイラインの塗り方等かなり好みだった。
本作は同社の作品「フェイクアズールアーコロジー」と世界観が共通しており、近未来を描いた世界観が魅力だが、いかんせんライターの癖が出て、解説が冗長的、終盤に至るほどモチベーションが低下してしまった。CGは書き込みが緻密で、青や黒を起用とした配色にサイバーっぽさが出ており、クールさもあった。
チュートリアルでは、アズライルが色んな小鳥居ボイスを披露してくれる。これも制作者が狙ったに違いない。素晴らしい。
「JOKER-死線の果ての道化師-」。

新人ライターの変わったテキストがネットでも話題になったが、そんなことよりも本作は声ゲーである。その上、希少な陵辱系という点はもっと評価されるべきだろう。
初めて見る名義ばかりだが、聞く覚えのある声が多いだろう。エロゲ出身者でも青山ゆかりや藤野らん等、鉄板が揃っている。800x600解像度やクリックによるオート継続不能等システムに不満がある点、テキストが逝っちゃってる点は残念だが、陵辱シチュで小萌先生やりそなさんの嬌声を聞ける点は素晴らしいというほかない。
「アステリズム」。姉ゲーであり、アグミオンゲー。音ちん久々に見たよ!
ループ物らしい切なさ溢れる構成で、良作に仕上がっている。とにかく作りが丁寧なのだ。奇をてらう展開も多くない、見事なシナリオというわけでもない、それでもプレイした後の余韻が残る。印象の良い作品である。
ボーカル曲は各章で用意され、かなり力が入っている。
特にTaishi作曲の2ndOP「StarryRain」はエロゲには珍しいトランス曲で、2012年でも一押しの曲だ。分厚いシンセリードと細くミステリアスなみとせのりこボイスの意外とも思える組み合わせの相性が抜群で、疾走感があるムービーに仕上がっている。
声方面では音ちんボイスを久々に聞いたなぁという印象が強かったがよくよく思い出せば、みみちゃんの鈴田ボイスの破壊力も半端なかった。
だが、ループの解説をするのに、

この混乱を助長するフローチャートw

どこかで見たような背景なんですが。
「月に寄りそう乙女の作法」。
ああ楽しかった!
名作といえるルートが含まれ、自信を持って面白いと言える本年一押しの作品だ。

女装ゲーという枠内で本作が秀でているのは、ヒロインと主人公を女性と意識して恋愛関係に至った点だ。
今までの女装ゲージャンルは、あくまで女装していても主人公は男性として描かれ、そのヒーロー的な要素が強調されることで恋愛関係が発展する展開がほとんどだったが、本作は女性同士で友情から恋愛への発展を丁寧に描き、新境地を切り開いた。その一方で、別のルートでは従来のような、主人公がヒーローとなる王道シナリオも用意されている。このバランスの良さから、私は女装ゲーの鉄板として、高い評価を下した。
また、本作は俺つばの延長線上にあるともいえるテーマが潜在的にではあるが見え隠れしている。
俺つばは世界は認識によって変わる、そして自らの世界を切り換えるための翼は誰もが持っていることを伝えていた。
つり乙は、意志が希望を生み、希望が世界を変えるという。ここまでは似ている。けれど自分で開く世界には上限があって、だからより広い世界に変えていくために、人は寄りそうのだ…と、いわば俺つばよりも指向性が付加された作品だと考えている。一家の中で絶望的な日々を過ごしてきた闇が裏にある一方で、ルナの元で延び延びと過ごす優しい世界である。
作中では語られない点も結構出てくるが、そこが本よく噛み砕けば補完可能な程度の絶妙な具合で穴が開けられており、何度も楽しむことの出来る深みある世界観に仕上がっているのである。
「ヒロイン全てに銀行名・企業名がついている」ことを始めとしたNavelならではの遊び要素も健在だ。本作が名作に至れなかったのはルートによって出来の差が激しかったためだ。ルナ、ユーシェが強く優遇され、それ以外の出来は酷い。マルチライターの弊害が出てしまったのだ。
そうそう、無粋と思いつつも、私が感じた不満を述べておくと、
・ルナルートは外出し強制(…というかほとんどのシーンが外出しだよ!)
・ルナとユーシェルートでコスHが無い
上記2点で壁を殴ろうかと思った。FDで希望は満たされるのだろうか。
年の瀬近付く11月末に登場したのが「ウィッチズガーデン」だ。ういんどみるはぶれない。
従来の欠点を補おうとシリアス一直でユースティアを構成したオーガストのようなメーカーがある一方で、ういんどみるは既存の長所を延ばし、限界と思われていたところも突破して新次元に達した。
優しく包まれるような世界観はそのままに、ぬるぬると立ち絵が動くE-moteであり、その自然な動作はまさに革新的であった。
特に、既存の作品と大きく差を付けたと感じたのは「まばたきの自然さ」だ。
E-moteの副次的な要素として、キャラクターの動きを見ながらメッセージを読み進められる快適さに感動を覚えた。
今まで画面に動きがある時は、マウスクリックを受け付けない・動作が遅くなるといった作品が多く、テキストとキャラクターの動きが同期せず世界観に浸る障害となっていたのだ。
実際の会話でも、相手の一挙一動を見て話すことはあまりないだろう。
主人公が話しているときのヒロインの反応や、話しながらのヒロインの動作、目線はテキストに集中しながらもヒロインの動作を捉えるといった働きは、現実と似たような感覚を擬似的に生じさせていると思う。現時点で最高レベルのシステムだ。
以前からどみるはコミケでの3Dポスター作成等、より実在感のあるキャラクターを求めているように思えた。どみるの考える二次元のデフォルメと自然の動作の両立、その結論がE-moteだったと考えているが、贅沢を言えばCGの動作がなかったことで、生きているような佇まいの表現に限界があった。将来的には世界の静止がない、つまりキャラクターが生きているかのような空間の再現を目指すのではないか。その路線では、次のステップはデフォルメを基調の3Dモデリングではないかと思っていたりする(タイムリープは時代が早すぎたんだ……)
システムでほとんどを語ったがどみるのシナリオは相変わらずである。シリアスで責めたトゥルールートのがっかりぶりはなかなかのもので、主人公の手にする魔剣アルファードの車過ぎる名前にワロタ。
E-moteに隠れてしまったが、声に力が入っているのもどみる作品の特徴である。あやりの声に含まれる高域の擦れと、涼乃さんの息遣いが本当たまらんですね(;゚∀゚)=3ハァハァ
中の人が中二病と2人くらい被っている気がしましたが、裏でも手を抜かず、充分な技量を感じさせてくれる姿勢は素晴らしい。
遥そらさんには是非もっと色々出ていただきたいですね!
11月…CUBE第3作「倉野くんちのふたご事情」も忘れてはならない。
前作を超える、そんな思いから生まれたCUBE「your diary」は、趣の異なる軽さを備えた、世界観に浸れる良い萌えゲーであった。
その良作を生み出す姿勢と挑戦心を評価し、ブランド買いに至るも、今回は砕けた。この原画でエロ路線だったのは貴重だったがシナリオが残念過ぎた。

だが絵は大変良い。妹陣が大変可愛い…エロかった。妹の一人の中の人が遥そらで、ロリっ娘ボイスが新鮮でした。是非もっと色々出ていただきたいですね!
そして2012年最後の作品は「夏空のペルセウス」となった。一般ゲーで爆損こいたというminoriがエロに帰ってきた。
シナリオはとても短い。故に登場人物に対する感情移入はしにくいが、その分要点が絞り込まれたシナリオや高いエロ密度が存在し、ユーザーの求めているものに応えていたと思う。
今までminoriと比べるとかなり省エネ、低コスト仕様という印象。お得意のオープニングムービーもフルアニメーションではない。
minoriのシステムは以前から高い品質にあったが、その前にプレイしていたウィッチズガーデンのE-moteを見た後では見劣りしていた。(特に、瞬き等の動きのモーション等において)
背景は現実では再現されないほどにコントラストが高く、広色域ディスプレイで表示すれば次元の違う映像を見せてくれる。
しかしながら、本作で何よりも素晴らしいのは声であろう。特に透香先輩の声…Sっ気ある声や、その細味があって聞きやすい声は新鮮で、まさに天使。市川ひなこさんの声は今年一番のヒットだったと思う。
ヤンデレ描写や一息に感情を吐露するシーンでは、前述の感情移入のしにくさがあってもなお刹那的に心に響いてしまうのはまさに声の力あってといえるものであった。ヒロインが全員巨乳だったのは私的に異議申し立てしたいところではあった。
■2012年総括 新境地を切り開く良作が複数誕生
シナリオが飛び抜けて良い、という作品は無かったが、様々なジャンルで今までのラインから一歩奥に踏み進んだ多くの良作が出た年だった。
一作を挙げるならやはり「月に寄りそう乙女の作法」というほかなく、Navelの老舗としての良さと、新たな女装ゲーの面白さを両立・確立した作品だった。
冗長でもなく、略されすぎもしないテキスト、それが私にとって一線を越える作品に求められる基準の一つだ。ヒロインにも一癖二癖があれば人間味が生まれ、なお一層の魅力が引き出される。この観点でつり乙はひたすら深く構成されており、強く心に響いたのであった。
その他かつてないモーションで臨場感を大きく進化させた「ウィッチズガーデン」、ひたすらに優しく百合を描いた「屋上の百合霊さん」、萌えテイストの皮を被った超欝作品の「はつゆきさくら」など、挑戦的な作品が多かった。また、「この大空に、翼をひろげて」のように、外注ライターがメーカーの枠を超えて活躍することで作品の質が向上している点も見逃せない。
ユーザーボリュームの多さから萌えゲーが主流にあることに変わりは無いが、1作品辺りのエロシーンが強化される傾向にあること、また初めから余計な日常シーンや恋愛形成の過程を省く(むしろ省きすぎな)作品が増えているのもトレンドだろうか。中の人などいない!や花色ヘプタグラムが良い例だ。
音楽についても触れておくと、BGMも含めた全体の評価では「はつゆきさくら」が最高の出来。サントラも購入した程だ。
主題歌ではころげてOPの「Precious Wing」を推薦したい。茶太の優しいボーカルとアップテンポな曲調が共存し、序盤から展開されるストリングスの旋律と、キレの良いパーカッション、ベース、そしてどこまでも伸びていく茶太のボーカルは、まさにグライダーが滑空する夏を思い浮かぶころげてを示す爽やかな曲だ。
私の効用についてはもはや言うまでも無いだろう。声(中の人)のみで選択する目線も出来た。
記事内で扱った作品も声に始まり声に終わった。2012年中の人私的ヒットは星咲イリア、小鳥居夕花、市川ひなこである。
昨年コンビクションリスト・バイであった卯衣もまた、つり乙で開眼した。
旧来からのベテランに加え、新人も多く発掘されており、作品を彩る上での声のバリエーションは一段と広がりをみせている。中の人も表から別名義で多く流入していることもトレンドの一つであろう。小鳥居さん、市川さんには今後も是非活躍していただきたいですね!

本作は近年では一番の豊作だった2009年を代表する一作のFDである。前作の無駄に燃える展開も踏襲されていた。ただ、まじ恋は私的にはプレイしている時は面白かったが、終わって間も無く内容を忘れた作品で、まじ恋Sプレイ時も本編の内容を思い出すのに苦労したのであった。
まじ恋の特徴はライタータカヒロ氏が描く日常のドタバタ系コメディに加え、登場人物の多さに見合った豪華な声優陣だ。
本作も多くの新キャラが登場し、名義は非公開ながら、多くの"どこかで聞いた声"を聞くことが出来た。ダメ絶対音感が試されるのだ。私はというと大友焔の声をキャッチした。後の小鳥居ボイスである。燕も聞きやすい声質で新鮮味があった。これも後のマジチャにつながる。
美琴の声をエロゲで聞いたのは東鳩2ぶりだが、正直エロシーンないとかなめてんの?あ?そして後々大図書館に先を越される残念ぶり。
13年以降ヒロイン毎に作品を出すという、分割商法ならぬルート商法に走るみなとそふとで、ここで打ち止めとなったのであった。
続いて、もう一つの1月物が「学☆王- THE ROYAL SEVEN STARS 」だ。元々何を思って本作に手を出したのか、覚えていない。
しかし、これは本当に、素晴らしい声ゲーだったのである。
シナリオはいつものランプで普通、むしろ読み飛ばして良いレベル。注目すべきは声である。小鳥居夕花(※中の人)処女作という点もさることながら、声に対する配慮が大変行き届いているのだ。
その陣営は、いつの間にかスマプリセンターになっていた澤田なつ(鉄板)、新人だけどどこかで聞いた小鳥居夕花、丸みのある声の割りに絶頂がやたらと上手い(私的印象)藤崎ウサ(当時、過小評価されていた印象)、裏では鉄板中の鉄板、演技の幅が広すぎるりっかりんこと北見六花(これも一つ飛ばし恋愛で飛び立った)、もはや神懸かっているとしか言いようの無い中の人ポートフォリオ。シーンの数も一人あたり7シーンと多いことに加え、ウサさんにこれだけ絶頂(絶叫)ボイスを叫ばせたのも素晴らしく、えちぃシーンでの
・主人公の呼び方があなたになる
・長い台詞やモノローグがない
……といったことが全ルートで徹底されるなど、スタッフが本当によくわかっている。
メインヒロインの名前は表のキャラクターと被せた確信犯…もとい故意犯。
もう一度言おう。
これは評価されていい。
LumiLiaは全力で賞賛を送りたい。この路線ならば、次回作も躊躇無く私は特攻するだろう。(→次回作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!→特攻しました)
強いて本作の不満点を述べれば、オート中のページ送りでオート解除となってしまう等のシステム的な部分だ。(これはマジチャで全て修正されておりもはや敵無し)
なお、FDの「 It's Heartful Days」はテコ入れとも言える出来で、ニーズを強く満たすものであった。
下落を続けていたランプオブシュガー株は一気に反転したのである。
次に、2月発売の「グリザイアの迷宮」。
実はプレイしたのは果実と共に年末年始。グリザイアシリーズは凄く大雑把に言ってしまえば、Routesから伝奇要素を差し引いて、重くしたような作品だ。主人公の通う学園にはトラウマを抱えた5人のヒロインしかおらず、学園物とは言えない事は確かで、箱庭モノに近い。
前半の糞長いギャグパートが終わり個別ルートに入ると、途端に重い展開が押し寄せてくる。軍や考案といった国家的な話も絡み、非日常を軸として、ウィットに富んだ会話を楽しめる。…が、全てを持っていったのは天才である姉の存在であった。全3部作の内の2部作目が本作で、各個別ルートのアフター、主人公の過去話に焦点が置かれている。この構成どこかで見たことがあると思ったらふむ、暁の護衛ですな。正直あまり書くことがないが私はマキナ推しだ(キリッ

3月は、ゆずソフトの新作「DRACU-RIOT!」のプレイに終始した。ゆずソフト前作「のーぶる☆わーくす」は私にとってこれまでよりも格段に面白く、萌えゲーメーカーだったゆずソフトが一皮向けたと、期待値も高かったのだ。


結論から言うと、そこそこ良い萌えゲーという評価に留まった。詳しくはレビューをご覧頂きたい。コスト削減が意識されつつも、毎年作品を生み出すゆずソフトの姿勢は賞賛すべきものだ。
ヒロイン一人一人の威力は高かったが、テンプレート化した日常シーンに感じる退屈さや、「退魔弾」という世界観崩壊の突っ込み設定の存在がネガティブで、純粋に学園物を追及し満足度の高かった「のーぶる☆わーくす」よりも評価は後退した作品となった。2012年で唯一レビュー記事を投稿した作品だが、今思い返すとその後同種類の萌えげーが微妙だったこともあって、「あれは悪くなかった」と、プレイ当時よりも評価を見直している。…といっても80点には届かないが。あと梓のキャラソンはfripsideにしか聞こえない。
4月には思わぬ名作との出会いがあった。2月に発売された「はつゆきさくら」だ。冬をテーマにした思いがけぬガチ作品で、音楽やシナリオに恵まれた良作であった。
タイトルの軽さに惑わされてはいけない。ヒロインはみな可愛くて和めるが、その結末は重く、残酷だ。最後まで扱いの酷かったシロクマ、個別に突入したと思ったら初めから全てが終わっていた綾、他にも頭を壁に殴打したくなるようなルートばかりだ。
酒浸りで今を忘れようと無為に日常を送る主人公の姿に、社会の歯車として暗い日々を送る自らを重ねる。幻想の世界にあり続けようとするゴーストもまた、二次元から逃れられない我々への強烈な当てつけに思える。
気付けば精神的にフルボッコにされていた。恐ろしい作品である。

各ルートの構成も上手く、一人でもヒロインを攻略した後は、「ああこの作品はハッピーエンドに至るわけではないようだ」と、覚悟と緊張感を持ってプレイを進めることになる。
音楽も本作を彩る非常に美しい要素の一つだ。水月サウンドらしい音の軽やかさと切なく心に響くメロディが調和し、作品の世界観を一つ上の次元へ昇華させていた。I've sound最古のアルバム「verge」に収録されたがBGMで使われているという試みも面白い。
声もまた面白い要素が存在している。作品中多く登場するモブキャラボイスは、全て立ち絵のあるキャラクターの声優によって賄われており、故に一人の声優の様々な演技を楽しむことが出来るのだ。
キャラ萌えにも隙はない。メインヒロインはぴゃーぴゃー言ってて始めはうざいが、だんだん可愛くなってくる。車の人恐るべしである。
ちなみに私はこの作品で、サクヤ(非攻略キャラ)の声が素晴らしいなと、星咲イリアを耳に留めた。
OP「Hesitation Snow」はfripside2期の中で最高の良曲だと思っている。全てが終わり、KOTOKOによって唄われるED曲「Presto」もまた名曲である。
全員に受け入れられるかどうかはわからないが、全ての要素において高い次元で調和できている良作である。初雪から桜まで、卒業おめでとう。
「屋上の百合霊さん」は百合をテーマにした異色作だ。ライアーソフトはいつもエッジに富んだ作品をぶれずに出してくる。

今まで管理人は百合に対し敬遠していたところがあったが、「百合とはこんなに優しい世界だったのか!」と考えを改めさせられた。女性同士という関係に対し、あるカップルは葛藤を伴いながら、あるカップルは力強く肯定し……様々な恋愛模様が丁寧に描かれている。主従関係の中で女性同士としての恋愛を描いたつり乙ほど微細ではないものの表現がストレートで、より自然な恋愛であった。
少女漫画のようなデザインで、繰り広げられたシナリオもまた少女漫画であった。初心なヒロイン同士のやり取りに、和まざるにはいられないのである。新しい境地で見つけた、新たな心地よい世界。そんな実りある作品であった。ちなみにエロは絶望的だ。
「乙女が紡ぐ恋のキャンバス」は雰囲気が良く、さらにFDも同年発売と超速リリースながら、双方プレイした作品だ。
ensambleは作品が出るごとに安定的に面白さが増しており、ブランド買いのメーカーである。
女装ゲーの良さは「俺TUEE成分が発揮しやすい」こと、そして「男性の優位性が女性のみの空間で生かされる」点にあると思う。
また、女装ゲーを好む人も2つに別れていると思っていて、一つは女の子に変装する中性的な主人公に萌える人、もう一方は女装設定に付随する俺TUEEE要素を目当てにする人である。LumiLiaは残念ながら(?)後者目当てが主だが、emsenbleの女装ゲーは、双方の点において質が向上しており評価に値する。
過去作と比べ、本作の主人公の優位性は単純な身体的能力差ではなく、芸術の才能を主人公に備えさせた点にあり、その上でアートを軸とした世界観を作り上げることで、各シナリオで起伏が生まれたことが秀逸だった。各ヒロインのルートで異なった視点から芸術を取り巻く世界観を生かせたことで作品に魅力が生まれた。芸術という広がりに果てのない世界を軸に、白黒であった主人公の心が様々に彩られていく━━その綺麗な展開からは、ensembleというメーカーに確変めいたものを感じさせた。ただ、極めて残念なのは、幸ルートを除いてシナリオの構成が甘すぎることだった。明らかにライターが異なることがわかってしまうレベルで、ヒロインがアホの子になったり展開が滅茶苦茶なルート(FDで消えたあのキャラである)もあって勿体無い作品にもなってしまった。
主人公の声は桐谷華、これが男の娘としては踏まないの鈴田美代子ボイス以来の役にはまっていた声だった。脳が蕩けた。
5月にプレイした「この大空に、翼を広げて」は、夏にふさわしき良作だった。
これほど青春した作品を見たのは久しぶりだ。
我々がプレイするほとんどのエロゲ作品は、非日常的要素が絡んでいる。それは我々が暗に非日常を求めている一方で、制作側では日常要素だけでは話を発展させにくいということの証左なのだと思う。
しかし、ころげてにファンタジー要素は一切入らない。それでいて、面白いのだ。
人が目標を見つけ、何か一つの物に向かって力を合わせて突き進む、美しい世界観だ。人は単体では空を見上げることしか出来ないが、グライダーを用いれば空を飛ぶことが出来る。無限に開かれた未来への期待と不安感は空に投影され、果てしなき未知へのワクワク感が、作品を明るい方向性に導いている。本作に終わりはない。
その一方で、余りに綺麗過ぎる登場人物、世界観そのものに非日常感が垣間見えた気がしなくもなかった。
グライダーが離陸し、滑空する描写は見事だ。
大空を駆け抜ける爽快感が、テキストと共にスリル溢れる描写で伝わってくる。

背景は緻密に描かれ、品質が非常に高い。モーニンググローリーを始めとした自然の美しさが細かに描かれている。
皆でグライダーを作成して、空を飛ぶ。その過程にこれほどの実在感を感じさせられたのは、テキスト、ビジュアル、演出が一体となって空間を創り出すことに成功していたからだろう。
一方突っ込みどころは、またもマルチライターである。水準の高さを保持した小鳥、天音は紺乃アスタ氏が担当。夏の雨メインを務めた気鋭のライターだ。
怪我で自転車に乗ることを諦めた主人公がヒロインを取り戻すため、トラウマを乗り越え自転車で全力疾走する小鳥ルート、そのの一方で姉妹ルートでゴクゴクと尿を飲み干す主人公に、私はかにしのをプレイした時と同様の感触を覚えた。あげはルートも、恋愛への発展過程が明らかに異質で、いきなり情事を始める主人公らにお前らは猿かと突っ込まざるを得なかった。

はつゆきさくらを経て、星咲イリアを本作で堪能でき、俺ガッツポーズ。以降、星咲ボイス=小鳥で固定されたけどな!
平均回帰はあらゆるものでみられるように、はつゆきさくら、乙キャン、百合霊さん、ころげてと奇跡的な良作ラッシュに恵まれた後、一旦の谷が来たのであった。
6月末に登場したのは「fortissimo EXS//Akkord:nächsten Phase」。fortissimoは初作から未完成のまま世に出され、その後怒りの日の如くシナリオが追加され、新タイトルで再販されるという酷いシリーズだ。

本作は3作目にあたり、信者にはお気の毒というほかないが、LumiLiaが本作を購入したのはなんでもない、今まで一般ゲーだったシリーズが18禁化されたためだ。
サーカス作品におけるゲームの位置付けは私的には「最終試験くじら」で全て終わっている。それ以降のサーカスの功績……は、立花あやを始めとした、サーカス独自とも言える中の人の輩出にあると考えている。
サーカス作品の声優━━最近は表から引っ張ってくることが多いが━━は、それなりに上手い。本作では、新鳴はるかがいたのが大きかった。
話は戻るが、シナリオはひたすら戦闘力がインフレする中二バトル物。ひたすら読みにくい漢字やカタカナを多用し、テキストの質が書きたい内容に追いついていないことが気になったが、それ以上にまずいのは、
シナリオにまでブシロードが介入していたことだろう。

色々と察して欲しい。
その他、文字フォントが読みにくい、一部エフェクトのカットが出来ない、しかも動作が糞遅い、とシステム面でもストレスを感じる仕様で、声以外では糞評価を下さざるをえない。
「中の人などいない! トーキョー・ヒーロー・プロジェクト」、輝かしい過去の栄光を胸に抱き、もはや惰性で特攻しているのがALcotだ。

作品名を聞いてとりあえず確認せざるを得ない中の人であったが、あんずみつ、車の人、桐谷華とお、おう……近年ベテランになった裏表バッチコイのキャスト陣である。というか姉妹ブランドで同時期発売の作品と同じキャストで「収録を1回で済ませたかったのでは」省エネ疑惑がかけられることとなった。るい様可愛すぎてヤバい。
勢いとパロディでひたすら走り続けるALcotは三角関係のドロドロ恋愛劇という昔の路線と決別している。
でもノリは面白い。その裏で、一抹の哀愁を感じるLumiLiaであった。

「Rewrite Harvest festa!」は一般ゲーではあるが取り上げておきたい。率直に言えば、
私が見たかった篝ちゃんはこんなのではなかった。
全体的に短く、尻切れ感もあって、未完成である。
朱音ルートもほぼやり直しであり、これやる意味なかったのでは。私はあの終わった世界の果てで、二人がどう生きていくかが見たかったと言うのに。
Rewriteで繰り広げられた世界をリセットにしてしまう、この行為は星の記憶を否定しているのではないか?
それでも一般ゲーという枠内でルチアルートで擬似セックル描写に挑戦した竜騎士07氏には敬意を表したい。
「終わる世界とバースデイ」。レコンキスタのライター、であれば…と、ご無沙汰コットン作品に至った。
各ルートでは様々な怪奇現象が起こり、やがて世界に潜む大きな謎が設定が隠されている。割と使い古された展開でありながら、エロゲで見たのは初めてだと思うし、ラストの締めは大変良くまとまっている。片岡ともが担当したという織姫のみ別次元でもはや真ヒロインである。余韻もある良作だ。あと、良いみるゲー。
OPはデンカレだったことに珍しさを感じた。
「World end economica 1&2」。全3部作のうちの第2作目が夏コミにて発売された。本作は同人ゲーであり、エロゲでもないが、LumiLiaの興味を強く引いたのだ。
ライターは支倉凍砂氏、作品ジャンルはインベストメント・パンク・ノベル…と、金融色の強い作品になっており、作中では株式市場でのトレードを始めとして、「投資銀行」「クオンツ」「金融工学」といった単語が登場し、架空の事業会社から現実に存在するファンドまで登場する。しかしこれらはあくまでスパイスであって、本筋はヒューマン・ドラマだ。

何が人の価値を決めるのか。カネか、正義なのか、信仰心なのか。主観的な価値と客観的な価値はどこで差が生まれるのか。
第一部で描かれた慢心と絶望の後、第二部で描かれた不条理。動的で不条理、弱肉強食の現実を見せつけながら、それでも誇り高き意志が存在する。残る1作をLumiLiaは楽しみにしている。背景の綺麗さと、BGMの良さも素晴らしい。
「魔法使いの夜」。本作も一般ゲー。型月が送り出した最新作だ。
Fateの時からそうであったが、SEと演出の一体感は凄まじく、戦闘描写の格好良さ、そして没入感は頭ひとつ抜けている。魔法に対する思想、設定は確固として根付いており、魔法物を書かせるなら奈須きのこはひとつの答えであろう。短いながらも、文庫を読むような感覚で楽しめた。
塗りがよくなったせいだろう、CGの品質も格段に上がっていた。ボイスはなし、ビジュアルノベルというジャンルを極めたような作品だと思った。あと、エロゲではない点は☓。
「波間の国のファウスト」。ヒロインがバイアウトファンドのマネージャー、1国二制度の舞台とシンガポールと中国の深センを混ぜたような特区の存在。エロゲには珍しい経済を軸に据えた作品で、怖いもの見たさで突撃した。

実質実効為替レートは上昇基調、前年比11.2%、前年比8.9%(6月)、0.7pt減(国家統計局)
で、中国の鉱工業生産の原指数って公表されてないよね。
結論から言えば、少し私の予想とは違っていた。経済面については序盤はハゲタカを意識したような文脈もあったが、作品全体としては専門用語も多用され、ウォールストリート的なウィットに富んだ会話や駆け引きが展開されていく。残念だったのは、ブラックスワンや市場の動き自体は伝わったが、人々の動きは、経済物としてはリアリティも足りなかった点だろうか。学院資産運用部も目的が不明確で、やはり金融の情報をまとめ切れていない印象を受けた。もう少し多くの立場の投資家目線が欲しかった。人権問題、原発問題、金融危機、色々と詰め込みすぎて最終的にそれぞれのテーマが薄くなってしまったと思う。
海外のファンドで多くの実績を積み上げ、帰国した主人公……大風呂敷を広げ、どんなに規模の大きい展開が始まるかと思いきや、ヒロインの大判焼き屋経営の建て直しに励んでいるという矮小さに泣いた。問題の突破法はやたら細かいに、パニックに陥った市場をT-bondスプレッドのチャート上の値動きのみで表現していたのはやや残念。しかも解説一切なしで素人置いてけぼりの状況だ。
素人は置いてきぼりなんじゃ…と思いつつなぜトレジャリースプレッドなのか…と思うのであった。
金融を軸に入れるなら、その良さは生かして欲しかった。要するに私は求めるものを間違えたのだ。面白さや濃さではワールドエンドエコノミカ、精液で学ぶ韓国経済が面白い。
キャラデザは塗りが原画の良さを殺してしまったようにも思える。BGMの大雑把っぽさなど、総括すると、5年前にタイムスリップした気になった。ただメーカー的にもライター的にもこれからだと思う。進歩を期待したい。
「イモウトノカタチ」は2012年で最も糞ゲーといえる地雷作品であった。
それに実妹と背徳にひたすら突っ走るというユーザーの求めていたものを全く満たしていなかったことに加え、シナリオは未完成で、主人公がキチガイ過ぎることが大問題であった。ライターは常識を身に付けるべき。
cuffs系列は声に力が入っており、豪華だ。ピンクは棒声が癖になる卯衣。ミータはまたもあんずさん、幼馴染は未来日記でヤンデレしていた人だ。だがエロは薄い。プレイする価値無し。(いや、ほんとつり乙があって良かった)
強いて言えば、1年経った今でも、糞ゲーの筆頭格として挙げられること、「フフリ」と呟けば腹パンの合図。

この立ち絵を見ているとやる夫が思い浮かぶのは私だけでしょうか?

まゆきは天使。
「いろとりどりのヒカリ」は昨年取り上げた作品いろとりどりのセカイFD。
真紅との甘々いちゃいちゃな日々が目的だった本作だが、とてもFDとは思えない程、ボリュームがあり、本編クラスの重い作品であった。
コントラストの強い色彩、重厚感ある音楽はそのままで、テキストもますます詩的であった。本シリーズを私が気に入っているのは論理的でいて、抽象的なところだ。
白い羽根や最果ての図書館、多くのいろとりどりの世界。現実で形として表す事の出来ない概念が、いろセカの中では実態を伴う。形を変えて別のものを比喩するのは、ジブリ的だと思う。
言葉は世界とするくらいだ、テキストも強いのだ。
「Re:birth colony -Lost azurite - 」。

世界観ゲー兼、声ゲー。小鳥居出演作2作目ですよ!
キャラデザはアイラインの塗り方等かなり好みだった。
本作は同社の作品「フェイクアズールアーコロジー」と世界観が共通しており、近未来を描いた世界観が魅力だが、いかんせんライターの癖が出て、解説が冗長的、終盤に至るほどモチベーションが低下してしまった。CGは書き込みが緻密で、青や黒を起用とした配色にサイバーっぽさが出ており、クールさもあった。
チュートリアルでは、アズライルが色んな小鳥居ボイスを披露してくれる。これも制作者が狙ったに違いない。素晴らしい。
「JOKER-死線の果ての道化師-」。

新人ライターの変わったテキストがネットでも話題になったが、そんなことよりも本作は声ゲーである。その上、希少な陵辱系という点はもっと評価されるべきだろう。
初めて見る名義ばかりだが、聞く覚えのある声が多いだろう。エロゲ出身者でも青山ゆかりや藤野らん等、鉄板が揃っている。800x600解像度やクリックによるオート継続不能等システムに不満がある点、テキストが逝っちゃってる点は残念だが、陵辱シチュで小萌先生やりそなさんの嬌声を聞ける点は素晴らしいというほかない。
「アステリズム」。姉ゲーであり、アグミオンゲー。音ちん久々に見たよ!
ループ物らしい切なさ溢れる構成で、良作に仕上がっている。とにかく作りが丁寧なのだ。奇をてらう展開も多くない、見事なシナリオというわけでもない、それでもプレイした後の余韻が残る。印象の良い作品である。
ボーカル曲は各章で用意され、かなり力が入っている。
特にTaishi作曲の2ndOP「StarryRain」はエロゲには珍しいトランス曲で、2012年でも一押しの曲だ。分厚いシンセリードと細くミステリアスなみとせのりこボイスの意外とも思える組み合わせの相性が抜群で、疾走感があるムービーに仕上がっている。
声方面では音ちんボイスを久々に聞いたなぁという印象が強かったがよくよく思い出せば、みみちゃんの鈴田ボイスの破壊力も半端なかった。
だが、ループの解説をするのに、

この混乱を助長するフローチャートw

どこかで見たような背景なんですが。
「月に寄りそう乙女の作法」。
ああ楽しかった!
名作といえるルートが含まれ、自信を持って面白いと言える本年一押しの作品だ。

女装ゲーという枠内で本作が秀でているのは、ヒロインと主人公を女性と意識して恋愛関係に至った点だ。
今までの女装ゲージャンルは、あくまで女装していても主人公は男性として描かれ、そのヒーロー的な要素が強調されることで恋愛関係が発展する展開がほとんどだったが、本作は女性同士で友情から恋愛への発展を丁寧に描き、新境地を切り開いた。その一方で、別のルートでは従来のような、主人公がヒーローとなる王道シナリオも用意されている。このバランスの良さから、私は女装ゲーの鉄板として、高い評価を下した。
また、本作は俺つばの延長線上にあるともいえるテーマが潜在的にではあるが見え隠れしている。
俺つばは世界は認識によって変わる、そして自らの世界を切り換えるための翼は誰もが持っていることを伝えていた。
つり乙は、意志が希望を生み、希望が世界を変えるという。ここまでは似ている。けれど自分で開く世界には上限があって、だからより広い世界に変えていくために、人は寄りそうのだ…と、いわば俺つばよりも指向性が付加された作品だと考えている。一家の中で絶望的な日々を過ごしてきた闇が裏にある一方で、ルナの元で延び延びと過ごす優しい世界である。
作中では語られない点も結構出てくるが、そこが本よく噛み砕けば補完可能な程度の絶妙な具合で穴が開けられており、何度も楽しむことの出来る深みある世界観に仕上がっているのである。
「ヒロイン全てに銀行名・企業名がついている」ことを始めとしたNavelならではの遊び要素も健在だ。本作が名作に至れなかったのはルートによって出来の差が激しかったためだ。ルナ、ユーシェが強く優遇され、それ以外の出来は酷い。マルチライターの弊害が出てしまったのだ。
そうそう、無粋と思いつつも、私が感じた不満を述べておくと、
・ルナルートは外出し強制(…というかほとんどのシーンが外出しだよ!)
・ルナとユーシェルートでコスHが無い
上記2点で壁を殴ろうかと思った。FDで希望は満たされるのだろうか。
年の瀬近付く11月末に登場したのが「ウィッチズガーデン」だ。ういんどみるはぶれない。
従来の欠点を補おうとシリアス一直でユースティアを構成したオーガストのようなメーカーがある一方で、ういんどみるは既存の長所を延ばし、限界と思われていたところも突破して新次元に達した。
優しく包まれるような世界観はそのままに、ぬるぬると立ち絵が動くE-moteであり、その自然な動作はまさに革新的であった。
特に、既存の作品と大きく差を付けたと感じたのは「まばたきの自然さ」だ。
E-moteの副次的な要素として、キャラクターの動きを見ながらメッセージを読み進められる快適さに感動を覚えた。
今まで画面に動きがある時は、マウスクリックを受け付けない・動作が遅くなるといった作品が多く、テキストとキャラクターの動きが同期せず世界観に浸る障害となっていたのだ。
実際の会話でも、相手の一挙一動を見て話すことはあまりないだろう。
主人公が話しているときのヒロインの反応や、話しながらのヒロインの動作、目線はテキストに集中しながらもヒロインの動作を捉えるといった働きは、現実と似たような感覚を擬似的に生じさせていると思う。現時点で最高レベルのシステムだ。
以前からどみるはコミケでの3Dポスター作成等、より実在感のあるキャラクターを求めているように思えた。どみるの考える二次元のデフォルメと自然の動作の両立、その結論がE-moteだったと考えているが、贅沢を言えばCGの動作がなかったことで、生きているような佇まいの表現に限界があった。将来的には世界の静止がない、つまりキャラクターが生きているかのような空間の再現を目指すのではないか。その路線では、次のステップはデフォルメを基調の3Dモデリングではないかと思っていたりする(タイムリープは時代が早すぎたんだ……)

E-moteに隠れてしまったが、声に力が入っているのもどみる作品の特徴である。あやりの声に含まれる高域の擦れと、涼乃さんの息遣いが本当たまらんですね(;゚∀゚)=3ハァハァ
中の人が中二病と2人くらい被っている気がしましたが、裏でも手を抜かず、充分な技量を感じさせてくれる姿勢は素晴らしい。
遥そらさんには是非もっと色々出ていただきたいですね!
11月…CUBE第3作「倉野くんちのふたご事情」も忘れてはならない。
前作を超える、そんな思いから生まれたCUBE「your diary」は、趣の異なる軽さを備えた、世界観に浸れる良い萌えゲーであった。
その良作を生み出す姿勢と挑戦心を評価し、ブランド買いに至るも、今回は砕けた。この原画でエロ路線だったのは貴重だったがシナリオが残念過ぎた。

だが絵は大変良い。妹陣が大変可愛い…エロかった。妹の一人の中の人が遥そらで、ロリっ娘ボイスが新鮮でした。是非もっと色々出ていただきたいですね!
そして2012年最後の作品は「夏空のペルセウス」となった。一般ゲーで爆損こいたというminoriがエロに帰ってきた。
シナリオはとても短い。故に登場人物に対する感情移入はしにくいが、その分要点が絞り込まれたシナリオや高いエロ密度が存在し、ユーザーの求めているものに応えていたと思う。
今までminoriと比べるとかなり省エネ、低コスト仕様という印象。お得意のオープニングムービーもフルアニメーションではない。
minoriのシステムは以前から高い品質にあったが、その前にプレイしていたウィッチズガーデンのE-moteを見た後では見劣りしていた。(特に、瞬き等の動きのモーション等において)
背景は現実では再現されないほどにコントラストが高く、広色域ディスプレイで表示すれば次元の違う映像を見せてくれる。
しかしながら、本作で何よりも素晴らしいのは声であろう。特に透香先輩の声…Sっ気ある声や、その細味があって聞きやすい声は新鮮で、まさに天使。市川ひなこさんの声は今年一番のヒットだったと思う。
ヤンデレ描写や一息に感情を吐露するシーンでは、前述の感情移入のしにくさがあってもなお刹那的に心に響いてしまうのはまさに声の力あってといえるものであった。ヒロインが全員巨乳だったのは私的に異議申し立てしたいところではあった。
■2012年総括 新境地を切り開く良作が複数誕生
シナリオが飛び抜けて良い、という作品は無かったが、様々なジャンルで今までのラインから一歩奥に踏み進んだ多くの良作が出た年だった。
一作を挙げるならやはり「月に寄りそう乙女の作法」というほかなく、Navelの老舗としての良さと、新たな女装ゲーの面白さを両立・確立した作品だった。
冗長でもなく、略されすぎもしないテキスト、それが私にとって一線を越える作品に求められる基準の一つだ。ヒロインにも一癖二癖があれば人間味が生まれ、なお一層の魅力が引き出される。この観点でつり乙はひたすら深く構成されており、強く心に響いたのであった。
その他かつてないモーションで臨場感を大きく進化させた「ウィッチズガーデン」、ひたすらに優しく百合を描いた「屋上の百合霊さん」、萌えテイストの皮を被った超欝作品の「はつゆきさくら」など、挑戦的な作品が多かった。また、「この大空に、翼をひろげて」のように、外注ライターがメーカーの枠を超えて活躍することで作品の質が向上している点も見逃せない。
ユーザーボリュームの多さから萌えゲーが主流にあることに変わりは無いが、1作品辺りのエロシーンが強化される傾向にあること、また初めから余計な日常シーンや恋愛形成の過程を省く(むしろ省きすぎな)作品が増えているのもトレンドだろうか。中の人などいない!や花色ヘプタグラムが良い例だ。
音楽についても触れておくと、BGMも含めた全体の評価では「はつゆきさくら」が最高の出来。サントラも購入した程だ。
主題歌ではころげてOPの「Precious Wing」を推薦したい。茶太の優しいボーカルとアップテンポな曲調が共存し、序盤から展開されるストリングスの旋律と、キレの良いパーカッション、ベース、そしてどこまでも伸びていく茶太のボーカルは、まさにグライダーが滑空する夏を思い浮かぶころげてを示す爽やかな曲だ。
私の効用についてはもはや言うまでも無いだろう。声(中の人)のみで選択する目線も出来た。
記事内で扱った作品も声に始まり声に終わった。2012年中の人私的ヒットは星咲イリア、小鳥居夕花、市川ひなこである。
昨年コンビクションリスト・バイであった卯衣もまた、つり乙で開眼した。
旧来からのベテランに加え、新人も多く発掘されており、作品を彩る上での声のバリエーションは一段と広がりをみせている。中の人も表から別名義で多く流入していることもトレンドの一つであろう。小鳥居さん、市川さんには今後も是非活躍していただきたいですね!
コメント
コメントの投稿