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【TV Review】 AQUOS クアトロン LV3,LX3 店頭レビュー

2010年11月07日 01:31

世界初の4原色パネル、という謳い文句でシャープが満を持して送りだしたAQUOSクアトロン発売から3ヵ月が経過した。
ところが今のところ、REGZAのように購入者が溢れているわけでもなければ、声高にレビューを聞くこともない。
ある意味シャープらしい、地味に佇むクアトロン。

しかし、アニメとのタイアップ特集「クアトロンはアニメでも真価を発揮するのか?」にて超電磁砲の記事を組まれたとあっては、4波長バックライトAQUOSを長年使用した管理人として、クアトロンの画質を確認しないわけにはいかなかった。もちろん、超電磁砲ソースで。


その映像は驚くべき━━━━ネガティブ・サプライズであった。

本記事ではクアトロン採用機種、LV3、LX3についての感想を述べる。両機の違いは3D対応の有無とグレアかそうではないかであり、画質の傾向は同じである。

■フレーム補間はヌルヌルになるものの、精度は高くない
画質については長くなるので、まずフレーム補間から触れていきたい。AQUOSは高画質マスターエンジンを搭載して以降(おそらくDS6頃)、映像がヌルヌルになるフレーム補間の機能を用意している。
クアトロンでも従来通りの機能を積んでおり、補間処理に変化はないものと思われる。
特性としては日立のなめらかシネマより優秀であるものの、東芝のハイスピードクリア4倍速、ソニーのモーションフローの精度には及んでいない。
具体的には、とある科学の超電磁砲OP2(Level5)の冒頭部、御琴が伸ばした手がズームアウトしていくシーン(→参考)がスムーズに動かず、ガタつきを確認したことや、風車を背景に下方向へパンしていくシーン(→参考)では、初め下方向に対してのフレーム補間が機能していたものの、右から左に電車が流れていく箇所で、下方向のフレーム補間にガタつきが生じ、REGZA以上に電車が不自然に消える、補間エラーが発生していた。


■クアトロンにも千鳥配列は健在。しかしパターンが変わった?
AQUOSと言えば、前々より悪名高き千鳥配列がパネルの特徴として挙げられる。
千鳥配列は輪郭部が曖昧になり、縦横の直線がギザギザになる。構造的には斜めの線を綺麗に描けるが、輪郭部の点灯する画素がまだらになるため、映像の質感を損なうことに繋がる。現在この配列はシャープ製パネルのみに見られるもので、Lumiliaでは、昔からAQUOSのネガティブポイントとして扱ってきた。

クアトロンでも、相変わらず千鳥配列が健在で、ご丁寧にRGBYの千鳥配列になっている。当然直線はガタガタである。
また、画素が一つ増えたせいか、目視で千鳥のパターンが変更されたように思う。従来機では横に波打っていたものが、縦に波打つように感じる。
その影響もあってか、LV3を確認した際、友人からは「黒い縦線のようなものが見える」といった意見があった。
千鳥配列はAQUOSクアトロンのネガティブポイントの一つとして、未だ健在である。…もっとも、本機の抱える他の問題に比べれば実に小さな問題なわけだが。


■くすんだ色。赤が致命的
超電磁砲OPを共通ソースとして、今までHX900,VT2,ZG1等で様々な機種で検証を行ってきたが、クアトロンはそのようなレベルを遥か超える、ひどいものであった。

その特徴は、色がくすんでいるのだ。特に、赤が致命的に弱く、暗く潰れているのである
これは、通常の液晶テレビのピクチャ設定を下げたものに似ている。赤のレンジが狭い、コントラストが低いと捉えるのが妥当だろう。
店頭でこの赤のおかしさを確認したい人は、ホームメニューのチャンネル選択で表示されるNHKロゴの赤を見るとよいだろう。他社製との比較はもちろん、従来の3原色RGB-UV2Aパネル搭載機種に比べてもクアトロン搭載機種の赤の発色が悪いことが確認できるはずだ。

色のくすみがおかしいのは赤だけが原因ではない。全体のカラーバランスも狂っているのである。
超電磁砲のOPでは初春、佐天さんの肌が病気かと思える程の色をしていた。
学園都市の空の淡い青、木山先生のガヤルドの青、レールガン発射シーンの深い青…に至っても、その全ての発色が、呆れてため息が出るほどに━━━━他社製とは異なるものであった。
ハイライトの階調はギトギトで色が潰れ気味、青や緑系の色は原色に近づけば近づく程レンジの狭さが目立っていたように思えた。赤系の発色はマゼンダに近い色合いだ。一方、黄色は妙に鮮やかで他の色味との差で違和感を覚える。水平移動では残像が目立ち、黒子が美琴の手を引く動きの早いシーンでは輪郭に纏わりつくノイズが気になった。

ASCIIの特集「クアトロンはアニメでも真価を発揮するのか?」でも述べられていたように、ダイナミックモード、フォトモードでも検証したが、まずダイナミックモードの時点で他社製に比べ、全体的に暗い発色でぼやっとした画質であった。加えて、フォトモードにすると、さらに1枚ヴェールがかかったような画質に変貌する。
その後、設定をニュートラルに近づけ、色温度、色合い等の設定変更を試すと、輪郭に纏わりつくノイズは幾分かマシになったものの、黒く沈んだ赤の発色が変わることはなかった。まともな色設定をするためには、プロ設定から細かく彩度・明度など調節していかねばならないだろう。(それでも駄目なことは、後に触れる)プリセット設定は、使い物にならない。

ここまで酷い発色を見たのは久しぶりだ。
初めはプレーヤーの不具合かと思い、LX3や別のLV3でも試したが、クアトロン自体が同じ傾向を持っていたのである。


■なぜクアトロンの色は悪いのか
クアトロンの発色は、異常と言ってよい。一体、どうしてこうなってしまったのだろうか?
その原因は、パネルの構造や特性から、いくつか理論的な推察が出来る。

  Yの追加によって、RGBのコントラストが犠牲になった
直接的な要因は、4原色のクアトロンパネルにあると考えられる。
Yのサブピクセルを追加したことで、相対的にRGBサブピクセルの面積が小さくなり、輝度が低下することで、色の伸びが悪くなった。これが、今までに比べ赤が弱く、発色が色褪せたと感じた原因だろう。
そんなコントラストの低いRGB原色と同じ映像に、輝度の高い黄色系の発色が同席していれば、なおさらカラーバランスが崩れ、RGBは色褪せて見えるだろうと考えられる。

aquosquat.jpg

webで公開されているクアトロンパネルの画素の拡大図を見ると、緑と黄色のピクセルの面積が小さく、赤、青の面積が大きいことが確認できる。それらしい文言が並んでいるが、面積が縮小したことで赤が死んだことを、開発側も認識していたのかもしれない。

  映像エンジンの作り込みが甘い≒開発力不足
もう一点、クアトロンの色がここまでおかしいのは、映像エンジンの作り込みが甘く、チューニング不足だったからだろう。
本来、映像エンジンがしっかりしたものであれば、デフォルトで色がおかしくとも、調整によって階調を損なうことなく色を正しく補正することが可能である。
しかしクアトロンでは少なくとも、映像エンジンのインターフェースは従来と全く変わっておらず、カラーマネージメントの調整項目もシャープおなじみのRYGCBMの6つの調整項目のみであった。内部の処理精度がより高く、ユーザーが調整出来る範囲が広ければ、もう少しまともな画質になったのではないだろうか。

エンジンの質だけでなく、プリセットのチューニングについても同じことが言える。
4原色パネルを採用するにあたって、映像処理やバックライトの調整等、新たに設計し直す部分が多々あったわけだが、シャープに画を作る技術力はあっただろうか?
他社に設計を任せるにしても、このような変態パネルを採用する他社はないわけで、その画作りは自社による裁量が大きかったものと思われる。以前よりAQUOSが東芝エンジンを使用していたのは周知のとおりだろう。
Lumiliaではクアトロンの作り込みの甘さは、まず、このチューニングの悪さにあったものと考える。


最後に、海外サイトで定量的なデータと共に、クアトロンパネル採用TVの詳細なレビューが記載されているので是非読んでほしい。
⊿eの誤差値に注目。レビュアーがキャリブレーションを諦めるという笑えない結果が出ている。

Sharp LE925 review - flatpanelshd

抜粋
>In the standard settings Sharp LE925 has very aggressive picture characteristics. Colors are oversaturated and the gamma curve is not flat.
>We never got perfect color accuracy from LE925 – nor LE820 – but we went on to examine the color gradation – how the TV distinguished the many different color shades, which is just as important.


■4原色採用理由は3Dにあり
元々色は3原色で成り立っており、黄色の発色は青と赤が存在すれば問題ない。であるにも関わらずクアトロンはなぜ黄色のサブピクセルを必要としたのだろうか?
実機を見て改めて感じたことだが、シャープが新たに黄色を採用した理由は、光利用効率の高さを利用して輝度を稼ぐため、という理由が9割形であるとLumiliaは見ている。
4原色を採用するにあたっては、新たな設計の必要性、色のチューニングが難しいことは事前に想定されたはずだ。それでも、クアトロンがサブピクセルを追加してまで輝度を必要とした理由は、3Dとシャープを取り巻く現状にあったと考えられる。3Dでコンテンツを視聴すると、フレームシーケンシャル方式では輝度が半減してしまう。そのため、快適に視聴する上で、映像の明るさが必要だったのだろう。また、シャープは他社にパネル供給を始めたため、自社製品に付加価値を加えるためにも、差別化をしたかったのだろう。だからこそクアトロンは、高い輝度を実現するとともに、4原色というネームバリューを背負って出現したと考える。


■結論 クアトロンはレベル0である
LV3は今すぐにLV0にモデル名を変えていい。
市場に出ているのがおかしいTVだと思う。

上述したようなアニメ特集によって犠牲者が増えるのも避けてほしい
かつてない程に批判的な記事になってしまったように思えるが、管理人の正直な感想である。
以上、LumiliaではAQUOSクアトロンの現行モデル「LV3」「LX3」「XF3」を全力で購入回避推奨とする

もし今AQUOSを買おうというならば、従来のRGB UV2Aモデルを選ぼう。SE1等のモデルの方が、余程まともな発色をしている。
なお、AQUOS RGB-UV2Aパネル搭載機種は赤が苦手なようで、色の傾向もソニーや東芝のような彩度の高い赤とは異なり、沈んだ、深い赤が出る。4波長バックライト時代のAQUOSは明るい赤を出していたことから、この変化には、シャープなりの何らかの意図があるのだろう。
地味ながらも自然な画作りに仕上がっている点がAQUOSの良さであり、UV2Aパネルでもその流れは息づいている。
それだけに、今回のクアトロンの不自然に鮮やかな画質は、残念でならない。
購入の際は、充分に他社製と比較し、選択して欲しい。


コメント

  1. ryoji | URL | -

    Re: 【TV Review】 AQUOS クアトロン LV3,LX3 店頭レビュー

    私も店頭で3Dクアトロンを見た時、妙に画面が眩しく
    肌に生き生きした感じを受けなかったのですが、
    なるほどそういう事だったんですね・・・

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