2010年01月10日 00:00

ジェームズ・キャメロン監督製作の3D映画『アバター』を見てきたので、感想と意見を書いてみたいと思う。
おわかりかと思いますが、本記事のメインは3Dに対する私の意見です。
まず初めに本編の感想をちょろっと。超簡単に内容を説明すると、未知の惑星で自らの利益を求める人類と、星を守る原住民が戦うというもの。アメリカのインディアンを思い出させるストーリーでした。ラストシーンのネタバレは見てしまうとちょっと残念なことになるので、事前情報はなしで見た方が良いと思います。
ツッコミ所は多数あるが、構成は王道。
CG表現が秀逸で、背景が非常に綺麗なので、細かいところは気にせずに見た方が楽しめそうです。現実にないものをもつもう一人の自分に傾倒していく、というシナリオは個人的に.hackを思い出しました。
今回視聴した映画館は六本木のTOHOシネマズ。その中でもスクリーン7という日本有数の大きさのスクリーンを持つ設備で鑑賞することが出来、映像、音響ともに最高の環境でした。
映像はデジタルシネマ上映でフィルムノイズが全くなく、それと同時にハイビジョンを悠に超える解像度が実現されており、今まで見た映画館の画質の中で最も綺麗といえるものでした。
本編が始まる前に上映された番宣の綺麗さにおもわず友人と「おお!」と呟いてしまったぐらいのすさまじい画質でした。
視聴者は外国人が4割ぐらいと多い印象。ちょうど私の後ろのグループが映画の要所要所で盛大なリアクションを示していたので、外人がどのシーンで笑ったりするのかがわかり、参考になった。日本人とは少し感覚が違うということがよくわかりました。
では、本題に移ろうと思います。3D上映についてです。
今回管理人が「アバター」を見に行った目的は、3Dがどの程度のレベルで実現されているのか確かめたかったからです。
結果は、3Dの現状と課題が見えたので正直な感想を書いてみたいと思います。
(※読みにくかった部分、未完成な部分があったので修正しました)
意見を述べる前に、3D上映について軽く触れておきたいと思います。
現在シネマにおける3Dは偏光フィルタ式、液晶シャッタ式、それに分光フィルタ式に分かれています。
ちょうど2chにコピペされていたこちらがわかりやすいと思います。
加えて、以下のURLにも大変詳しく記してあるので見てみることをお薦めします。◆REAL D-
方式:円偏光フィルター
メガネ:最軽量・50円程度・持ち帰り可・使い捨て・常に新品・メガネ常用者用&子供用もあり・レイバンが唯一専用メガネを市販している
映像メリット:首をかしげても3D画像は崩壊しない。
映像デメリット:方式の特性上画面が多少暗く感じる。
◎劇場:ワーナーマイカルシネマズ、ユナイテッド・シネマ、シネマイクスピアリなど
◆DOLBY 3D-
方式:分光フィルター
メガネ:軽量・1万円以上・返却・アルコール消毒使い回し・運が悪いとメガネ曇ってる・メガネ常用者用&子供用なし
映像メリット:首をかしげても3D画像は崩壊しない。色再現性が他方式より高い。
映像デメリット:特にない
◎劇場:HUMAXシネマズ、T・ジョイ系列など
◆XPAND-
方式:液晶シャッター
メガネ:重い・5800円程度・返却・アルコール消毒使い回し・運が悪いとメガネ曇ってる・メガネ常用者用&子供用なし
映像メリット:首をかしげても3D画像は崩壊しない。
映像デメリット:方式の特性上メガネの液晶シャッター切替限界で画像がチラつく&暗い。
特性上スクリーンとメガネが平行になるようにしないとシャッターの偏光に阻まれさらに暗くなる。
レンズが小さいので メガネフレームが邪魔
◎劇場:TOHOシネマズ、MOVIX、109シネマズ、イオンシネマ、シネプレックス、シネマサンシャイン、新宿バルト9、新宿ピカデリーなど
◆IMAX デジタル3D-
方式:偏光フィルター
メガネ:軽量&視野が広い(子供用あり)・500円程度・返却・アルコール消毒使い回し・運が悪いとメガネ曇ってる
映像メリット:映写機2台使うため他方式より明るい。IMAX専用コンテンツ映像では他を圧倒するほどの3D映像になる。
映像デメリット:首をかしげただけで画像ブレて(乱視状態になる)
方式の特性上メガネがスクリーンに対して垂直・水平の状態を保たないと映像は崩壊する。
◎劇場:109シネマズ(川崎、菖蒲、箕面、名古屋)
2010/01/02 3D映画上映方式の違い - まどぎわ通信
3D鑑賞するにあたっては、人によりIMAXの偏光フィルタ式とXpanDの液晶シャッタ式で好みが分かれるようです。
管理人は実際に3D技術について2年前に少し携わった経験があるため、上記方式は全て経験しています。個人的には偏光フィルタ式は首をかしげると3Dが破綻するため、苦手です。(後述しますが、立体感に関する感想はいずれも同様です。)
■当日の3D環境と流れ
試聴席はど真ん中。列はスクリーン真中より少し高い見下ろす位置で、最高のポジションでした。
今回鑑賞した六本木TOHOシネマの映画館はXpanD方式でした。
上映前に3Dメガネを手渡され、上映中は眼鏡を通して鑑賞します。メガネの動作は赤外線によってリモートで切り替えられ、本編が始まると動作が開始されます。
この3Dメガネですが、動作していない状態では若干緑がかっています。液晶シャッターが動作すると、色の補正がされるようです。
3D上映中にスクリーンを裸眼で見ると、左目と右目の映像が高速で切り替わっているため、2重に見えます。
3Dメガネの動作や同期は丁度目と目の間にある受光部で取っており、手でおさえると同期されなくなり、映像がぶれます。(手を戻すと再び同期されます)
重さはそれなりにあって、気になる人はかなり気になるのではないかと思います。管理人の場合、大きさが合っていないのか視聴中ずれ落ちることが3~4回あり、少しわずらわしく感じました。
なお眼鏡は据え置き型、明るいところで照らしてみると結構傷がありました。特に鑑賞には問題ありませんでした。

そして視聴後、3Dについて友人と意見を出しあい、重ね一致。
「……これダメじゃね?」
3D株ストップ安でした。
視聴中に一体何回目を休めたかわかりませんね。実に疲れました。
■現状では3Dが映画で受け入れられるのは難しいだろう
今の技術では、3D映画が受け入れられることはまずないと思います。
それは、「見ていて違和感を感じ、目が疲れるから」です。
その理由を3つ上げたいと思います。
1、画面が暗い
ノイズがなく恐ろしく解像度が高く輝度の高いデジタルシネマも、液晶シャッタをかけると、非常に画面が暗くなります。(黒挿入をはさんでいるからと思われる)
この暗さが、目の疲れの原因の一つになっています。なおこの点は方式によるものなので、偏光フィルタ式等では問題ないと思います。
2、こちらが向こうの視点に合わせる必要がある
3Dの特徴である手前と奥行きの感覚を得る際、手前程スクリーンの左右のズレが大きくなっているのですが、これが個人差があり、初めなかなか合わず、違和感がありました。カメラのズレと人間のズレの差が違和感を生むようです。
また、映像もあくまでカメラの視点、自分の視点にはならないんですよね。例えば人間はピントが一瞬で合いますが、映画はあくまでカメラのピント移動で、カメラぼけのような映画表現もあり、現実で見えるものとは違うんですね。
カメラの焦点に合わせていかなければならない。だから慣れるのが難しい。
これは主にコンテンツの問題ですね。今回の映画はまだマシで、控えめな3D表現とピントぼけでしたが、海外の作品の多くはかなり3Dが強調されていてひどいです。
3、3Dが完璧ではない
左側に字幕が表示された時によく見ると字幕が二重になっているなど、不完全な3Dにより、せっかく世界観に入り込めていた所を邪魔され、違和感を感じた所がいくつもありました。
そして一番問題なのが画面の被写体が素早い動きで移動した時に発生するブレ(フィルムジャダー)で、これにより3Dの感覚に違和感を覚え、疲れを感じさせました。
その原因はたぶん明らかで、フレームレートの問題です。3D化に対応するため、これらのタイトルは144フレームの出力となっているようですが、これはあくまでリフレッシュレート144hzで書き換えているだけであって、動きは24フレームなんだと思います。(アニメが24フレームでも8枚しか書かないようなもの)
だから動きの早いシーン、例えば0.5秒で右から左に抜けていく被写体があったとすると、12フレームのコマ数で駆け抜けていくわけです。このガタつきは普通に見ていてわかるものだし、今回のような大スクリーンならなおさらです。
さて、3D化の意図を思い出してください。3Dは、あたかもそこにいるように━━━━現実と錯覚させるように、脳をだます手法を取っているわけです。
現実にこのようなブレは発生しているでしょうか?
映画特有の、このブレが出るたびに3Dに対して違和感を感じ、目の疲れが出たものと思います。
実はここらへんは制作者もわかってるんじゃないかな?と感じるシーンがいくつもありました。
クライマックスシーンにほとんど3D用いてなかったり、高速に動くシーンを敢えてスローにしてたりという部分がありましたからね……
最終的に、一つの見解に辿りつきました。
■3Dは映画が自ら生んだ矛盾
AVマニアなら一度は「映画の質感」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
映画にはフィルムグレインやフィルムジャダーといった「映画の質感」を表現するための一種の法則のようなものが存在します。それが通常のドラマ等映像コンテンツとの差別化になっているのです。

初めにフィルムグレイン(はてなキーワード > フィルムグレイン)から触れていきます。これはフィルムにのるザラザラとしたノイズです。
昔はフィルム撮影だったこともあって、サラサラとしたノイズが載っているのが普通でしたが、機材がデジタル化した今ではノイズは通常発生しません。しかし、映画においては敢えてフィルムグレインをエフェクトとして載せ、映画の質感とする制作者が多いようです。
もうひとつがフィルムジャダーです。今回の3D映画はこれが大きな火種となっています。
映画は通常24Pで作られており、独特なカタカタ感が発生します。
「24コマのカタカタとした動きがあってこそ映画だ」という認識は昔から根強く、今でも大変信仰されています。
一般的にも24フレームのカクカクとした表現は映画の質感として親しまれているし、我々もその画質に慣れています。
ソニーのフレーム補間技術「モーションエンハンサー」を映画に適用すると違和感を感じてしまうという意見は、我々が映画のフィルムジャダーに慣れているから、至極当然だと言えます。(24P→120Pに補間されてヌルヌル画質になるが、我々は24Pのカクカク画質に慣れているということです)
ところが、3D映画においてはこの24Pのカタカタ具合が、猛烈な違和感をもたらすのです。これは考えてみれば当然のことでしょう。
まるで映画の中に入ったかのような「現実感」を味わうために3D化しているわけだし、3D映画の仕組みも我々が現実で見るのと同じようにして、脳を錯覚させる方式です。
現実って動画の世界で言えば60P、ヌルヌルですよね?そこにカタカタはないですよね?
ならば3Dはヌルヌルで表現されてこそ、違和感無く一層の現実感が味わえるはずなのです。
でも映画業界は相変わらず24Pの質感を求めているようです。これが猛烈に矛盾しているんです。
超簡潔に意見を述べると、「3Dは最低60コマぐらいないと違和感出るのに、24コマで3D映画作るなよ」ということです。
今後3Dで映画を極めたければとにかくフレームレートを増やすか、高度なフレーム補完技術を用いてヌルヌルにしていくべきなのではないでしょうか?
そうすれば今回のような違和感を感じることは飛躍的に少なくなるはずです。
そして、それが出来ないなら3Dは違和感バリバリなので元のやり方でやるべきではないかと思います。
フィルムグレインについても同様で、3D上映はデジタルシネマが必須だし、リアリティある表現を追求していくためには捨てていかなければならないものでしょう。
映画業界は3Dによって自ら矛盾を作り出したと言える気がします。
そして今、3Dのために既存のテンプレートを捨てるのか、今まで通りいくのか、選択の時が来ているのではないでしょうか。
私が得た結論は、「映画は2Dで、今まで通りでいい」というものでした。
■3Dは期待出来る技術
3Dに対して滅茶苦茶酷評させて貰いましたが、これは現状の3D映画に対する意見です。
単純にフレームレートが多ければ3Dは多くのコンテンツに有効利用できるものと思います。
例えばゲーム等は60Pが基本で、かつ自分で操作が出来るので、臨場感を味わうことが出来、3Dとも相性バッチリです。
3Dカスタム少女を3Dでプレイして(*´Д`)/ヽァ/ヽァしてみたいものだ、と最低な感想で締めさせて頂きたいと思います。
最後に:映画のフレームレート云々の話題は管理人が推定したもので、仕組みを根底から理解しているわけではないので、もし明らかに間違いだよ、という記述がありましたら指摘して頂けると幸いです。
コメント
notitled | URL | -
Re: 『アバター3D』からみる3Dの課題
現状の3D映像を見たことがないので今回のアバターは見てみたいなぁと思っていたんですけど、地方だからやってないんだよなぁ・・・
映像にブレが生じるとは知りませんでした。
ゲームでは変わらない(かも?)ということなのでPS3の3D化に期待かな
( 2010年01月10日 11:12 [編集] )
cinemalion | URL | 17ClnxRY
Re: 『アバター3D』からみる3Dの課題
眼鏡派の自分には面倒だな・・・。3D映画上映方式の違い - まどぎわ通信
( 2010年01月10日 22:04 [編集] )
Prima | URL | 3/2tU3w2
Re: 『アバター3D』からみる3Dの課題
>notitled
映像のブレ(ジャダー)は、普通に見ていればあまりわかるものではないと思います。ただ、実際比較した場合、結構わかる方が多いのではないかと思います。
>cinemalion氏
トラックバックありがとうございます。眼鏡をかけている方と3Dとの相性は今のところあまり良くなさそうです。
上映方式について気にし過ぎるのも、映画を楽しむ観点では微妙にも思えますので、深く考えずに見てみるのも良いかもしれませんね。
( 2010年01月11日 20:51 [編集] )
774 | URL | qNXjQhIg
Re: 『アバター3D』からみる3Dの課題
3Dに挑戦したことは評価できるのですが、技術の未熟さがはっきりしましたね。
2Dが3Dになったことで映像的にインパクトのあるものになったか?と言われれば、それほどでもなかったですね。
1時間ほどして3Dに慣れてしまうと2Dと変わらなくなってしまうことも弱点でした。
2Dでももっと驚かせてくれた映像はいくらでもあったと思います。
3Dを強調した映画が3Dの未熟さを分からせてくれるとは何とも皮肉ですが
あと、暗さ、目の疲れをどうにかしないと3Dが苦痛になってしまいますね。
今後に期待する技術だなというのが私の感想です。
またCG多様をFR24・3Dで見ると言うのもぶれの原因になるのでしょうか。
( 2010年02月01日 01:31 [編集] )
Prima | URL | 3/2tU3w2
Re: 『アバター3D』からみる3Dの課題
概ね同感です。
人によって好みがあると思いますが、3DCGをFR24にしているからこそ、ガタつきが違和感の原因と言えると思います。
( 2010年02月11日 01:51 [編集] )
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