「けいおん!」はなぜ売れたのか

2009年09月08日 18:11

放送当初から各所で話題を呼び起こし、DVDやブルーレイだけでなく関連商品もトップクラスの販売成績を叩きだしているテレビアニメ「けいおん!」。放送終了後も2chのスレッドは勢いを潜めることなく伸び続けているようです。

一見するとありがちなまったり系アニメがなぜここまで売れたのでしょうか。
考察してみるといくつかの大きな特徴があり、これが圧倒的な支持につながっているのだと思います。

1 京都アニメーションというブランド 「京アニだからクオリティは高い」

まず、アニメ業界における京都アニメーションのブランド価値が挙げられるでしょう。

アニメを見る人にとって、京都アニメーションの知名度は非常に高く、例え知らない人がいたとしても口コミ等でその存在を知る場合も多いと言えます。
当然、その知名度に謙遜しない安定したクオリティが、評価につながっています。

より掘り下げてみると、作画と動画のバランスが取れていることが京アニの特徴と言える気がします。一般的なアニメでは枚数を多用してヌルヌルうごいた回は一枚絵として作画が破綻してしまうことが多く、マニアから反発を受けることがしばしばあります。(リリカルなのはのベルカ式作画が良い例でしょう)

k-on0.jpgところが「けいおん!」では1話冒頭を見ればわかるように、ヌルヌルとしたほかのアニメにはない動きと、キャラクターデザインに準じた安定した作画がバランス良く実現されています。

このバランスの良さは、作品に対するマイナス評価ポイントの払拭につながり、結果としてアンチが少なく、高い支持を受ける傾向につながっているものと思います。


2 オタクの描く理想像と現実

オタクはアニメに何を求めているのでしょう?感情移入してもうひとつのリアルな人生を感じることでしょうか。
「けいおん!」が取り巻く世界には1つの答えがあるような気がします。

k-on02.jpg例えば、「けいおん!」はキャラクターが女子しかおらず、男子が出てくることはありませんでした
舞台を華やかにする5人のメインヒロインはそれぞれ違った魅力を備え、グループではバランスの良さを持っています。
彼女らは日常を楽しみながら、軽音楽を通じて自分を見つけ、成長しながらバンドでも成功していきます。
とても綺麗なストーリーだと感じないでしょうか。

これらの部分に、我々の「理想」が入っているような気がします。
とてもかわいい女子高生が軽音楽と出合い、時にはふざけあい
ながら楽しく過ごす日常は、アニメを実際に視聴する我々には
見れるものではありません。それでもこうあったら良いなぁ、と思う「憧れ」が具現化された世界がそこにはあります。オタクの描く理想の世界観が出来上がっているからこそ、心地よさを感じるのではないでしょうか。

一方で現実的な側面もあります。「けいおん!」は学園モノのカテゴリーに入りますが、少なくとも突拍子な設定がなく、「本当にあるのでは?」と思ってしまいそうな部分があります。ギターが欲しい女子高生が友達とバイトしてお金を貯めて、店で値切って買う。楽器の練習は当然、上達するための合宿も行う。こういった部分も現実的ですね。

そんなリアルと理想が程良く混在した世界、これが「けいおん!」を取り巻く世界観の心地よさにつながっているのではと思います。


3 脱力系で気軽に見られる

作品の傾向として脱力系で、気軽に見られることも「けいおん!」の人気と関係していると思います。伏線などに気を配ることなく、頭をのんびりと休め、癒されながら見ることが出来る作品は、より支持が受けられやすいのではないでしょうか。

「けいおん!」は今までアニメを見ていなかった層にも受け入れられているようです。仕事疲れのサラリーマンが寝る前に視聴する構図が割と容易に想像が出来ます。本気でストーリーを追求したものと違い、ほんわかした日常を楽しめるアニメが受け入れられる要因が現実の社会にも潜んでいそうです。


4 1話から見なくても話題についていける

「けいおん!」は1話毎にアニメ内の時系列が分かれており、区切りが明確です。
例え前の話を見ていなかったとしてもそれなりに話についていけます。このような構成も「けいおん!」の見やすさに繋がっているのだと思います。


5 メディアの取り上げ方

新聞やテレビ等、メディアでの露出が多く、また多彩なメディアミックスを展開し成果を上げていることも「けいおん!」の特徴だと思います。

                k-on03.jpg

もちろん、メディア露出が多いのは、単なる売上などからの反響だけでなく、「けいおん!」に含まれた細かな設定がある気がします。
例えば舞台となった小学校だったり、声優ユニットに実際に演奏させてみたり、キャラクターの使うギターやヘッドホンが実際に販売されているモデルだったり……取材陣、専門家が取り上げたくなるような要素が多分に含まれているのではないでしょうか。

結果としてメディアが呼び込まれ、それによる知名度の増加がさらに人気を向上させる、それがメディアを呼び込む……まさに正のスパイラルが動いていると言えると思います。


6 Blu-ray Disc版の画質向上

「けいおん!」はDVDだけでなく、高画質収録のBlu-ray Discでも販売されています。
特に「けいおん!」は普通のアニメとは違い放送時は4:3の低画質な放送だっただけに、16:9でハイビジョンクオリティで見れることが付加価値になったと言えると思います。
画質を気にする人はマジョリティでないにせよ、今までになくネットでも反応が大きかったことから、需要の一要素として存在しているのだと思います。


ここで一度見直してみると、234の要素が組み合わさった「日常系萌えアニメ」は過去にも多くあることに気付きます。しかしそれだけでは売上と強い支持を得ることは出来ませんでした。
ここまで高い次元でこれらの要素が融合したのも、京アニが、過去に「らき★すた」といった日常系萌えアニメを一度作っており、メディアミックス戦略も含めたノウハウを積み上げる期間があったからではないでしょうか。

京アニの造り出すアニメは非常に戦略に富んでおり、分析する価値は大いにあると思います。


コメント

  1. いぬい | URL | -

    Re: 「けいおん!」はなぜ売れたのか

    >メディアミックスが上手い角川グループの力か
    けいおん!の連載は、芳文社のまんがタイムきらら系列で、角川は関係ないと思うのですが。
    逆に、角川が絡まなくてもこんだけ売れるのがすごいと。

  2. Prima | URL | 3/2tU3w2

    Re: 「けいおん!」はなぜ売れたのか

    >>いぬいさん
    ご指摘ありがとうございます。
    仰るとおりです、何を言っているんでしょうね私は。ハルヒで頭がやられたんでしょうか。
    記事を修正させて頂きました。

    …とすると、京アニか、芳文社の戦略は本当にすごいものですね。まるで角川かと錯覚してしまうほどでした。

  3. 坂家 | URL | xPfs20G6

    Re: 「けいおん!」はなぜ売れたのか

    はじめまして。
    けいおんの人気は凄いですよね。
    yahooにあるキーワードの注目で他の京アニ作品と比べてもその凄さがよく分かります。
    けいおんが人気の出た理由として
    ・キャラデザを原作に変に似せようとしなかった
    ・ライブ(演奏)というアニメで映える要素があった
    というのもあるんじゃないでしょうか?
    正直前者は+に働いたのか分かりませんが、後者はかなり+に働いたと思います。
    まずライブに限らず歌というものがアニメにおいて強い力を持ってます。
    リリカルなのは、グレンラガン等で人気のシーンの多くに歌が使われているのを見れば歌の力の大きさがよく分かります。
    次にライブはハルヒやマクロスFを見ても分かりますが、作品全体の中で印象に残りやすく、ライブは他のシーンよりも製作側が頑張れば頑張った分だけ視聴者に評価されます。
    最後にライブという盛り上がるシーンがあることがけいおんが他の盛り上がりどころの少ない日常系萌えアニメとの差なんじゃないのかなと思います。

  4. 774 | URL | -

    Re: 「けいおん!」はなぜ売れたのか

  5. Prima | URL | 3/2tU3w2

    Re: 「けいおん!」はなぜ売れたのか

    確認が遅れた関係上、返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
    以下、文章の都合上レスが逆になっています。

    >774
    興味深く読ませて貰いました。
    小難しい文章はあまり好きではないのですが、リンク先を要約すると、「けいおんは二次創作が出しやすい作りをしている」と解釈で宜しいでしょうか。
    至る所で記号化された要素が見えますから、当然ではないかと思います。ただ違う所を上げれば、私はうんたん♪ですら京アニが仕組んだ素材だと考えてしまう所でしょうか。
    「記号化」については追記の記事で触れたいと思います。


    >坂家
    こんばんは。お待たせして申し訳ありません。
    長文になりますが、ご容赦くださいませ。
    なお、以下の考察は追記として更新する新しい記事にも載せるつもりですので、「記号化」と言う用語等で疑問を持たれた場合は後日そちらを参照してみてください。

    けいおん!においてライブが重要な役割を果たしていることは私も概ね同意出来ますが、
    「ライブがけいおん!というアニメの中で映えた」から売れたというのは安直過ぎる気がしますし、例として挙げられていた挿入歌の役割ともまた違うものと思います。

    挿入歌を差し込むというもの自体10年以上も前から使い古されてきた手法ですし、印象に残るシーンというのはどのアニメでも必ずあります。
    例えば最近の作品でいうと「紅」というアニメの中で繰り出されたミュージカル演出ですね。プレスコならではのリアルな声の演出と異常なクオリティの作画は今でもたまに見直してしまうぐらいのもので、放送当時は随分話題になっていたものですが、その出来とは裏腹に「紅」のDVD自体はそこまで売れませんでした。


    これが何を指しているかというと、印象に残るシーン━━━━けいおんだとライブになるわけですが━━━━のクオリティが高いだけでは売上は伸びないということです。そう、「売り方」が巧くないとダメなんです。

    まず考えて頂きたいのですが、単純に考えて、シーンクオリティが高いという事実だけから直接売上に結び付くのは、その回のその時(たまたま)アニメを見ていた既存の視聴者層だけです。
    既存視聴者の満足度を上げることが売上増につながるのか?答えは否、それだけではダメです。

    ここらの捉え所を京アニだかTBSだかの偉い人はものすごくわかっている気がするのですが、ハルヒのライブアライブのようにアホみたいに作画にコストをかけず、それでも視聴者がおお!と思わせられる丁度良いレベルでライブシーンを作っているんですよね。
    さて、ここでけいおんにおけるライブシーンが起こす効果を分解すると以下になるのではないかと思います。

    ・メディアミックス(CDの売上、現実で行われるライブ収益)
    ・転載、二次創作への波及効果と一般化
    ・アニメとしてのクオリティ向上

    坂家さんが挙げておられたのは最後の項目ですが、この中で特に大きいのが2つめのネットの動画サイトへの転載と二次創作への波及効果です。ご存じのとおり、現時点ではニコニコ動画が特に大きな影響力を及ぼしています。
    視聴者の誰かがキャプチャしたライブシーンを動画サイトに上げると、記号化と動画サイトの性質により、情報が遺伝子ネットワークの如く爆発的に波及していきます。
    この中で、今までけいおん!……もとい、アニメすら見たことのなかった一般人がそのライブシーンを目にして、プラスの先入観でアニメの視聴へとつながります。12話のライブシーンがそれなりにリアルなのも、一般化に対応するためな気がします。
    一方けいおん!に含まれてる多量の記号は、二次創作、三次創作化を経て知名度、熱中度の向上をもたらすとともに、動画サイトから流入した新規視聴層をより深みに追い込みます。これが結果的に売上増につながります。

    一般人も知るようになると、既存視聴者、我々のようなオタクは一般人と話す際にも共通の話題として用いることが出来るようになりますし、これが話題になりメディアで取り上げられるようになると「~~が取り上げたアニメ」というように一層ヒートアップしていきます。新規層だけでなく差別化意識層(※)による売上増が見込まれるわけです。

    ライブシーンは確かに映えるものですが、これらは我々のような既存の視聴者を満足させるだけでなく、巧妙に練り込まれた売上増の戦略が含まれていると思います。

    今のアニメはクオリティだけではダメで、「売り方」が必要なのです。
    そしてけいおん!は売り方がこれでもかと言う程に極められています。


    実はお気づきの人もいたかもしれませんが、今回作った記事にはある言葉が前提として入っていて、
    それは、「けいおんが売れたのは新規層を取り込んだから売れた」というメッセージです。

    らき★すたの「4コマ要素」「日常系萌え」、そしてハルヒの「ライブアライブ」「激奏」。
    けいおん!はこれらの系譜を全て受け継ぎ、今までのデータが全て反映されている気がしてなりません。

    801ちゃんがキャンセルになり突然姿を表したけいおん!。
    考えれば考えるほど、「けいおん!」は京アニ、TBSが送り出すマーケティングの集大成といえると思います。


    差別化意識層……差別化することで効用を得る層のこと。一般人がけいおん!を知るようになったからこそDVD、BDを持つ行動に走り、差別化を図ること。オタクには非常にありふれている層で、CDを20,30枚買う行動も他人と差別化することで優越感を得たいという思惑があるものと思います。余談ですが環境追求も一部これに入るものと思います。

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